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お皿 フラッシュアップ


美味しい東北泣かせるな
— 「美味しんぼ」風評被害 —

 3・11東日本大震災3年のテレビ朝日の特番で、私は「これからは2つの風との戦いではないか。1つは風評被害、もう1つは風化だ」とコメントさせてもらった。その風評被害が大暴れしてしまった。
日刊スポーツの実際の記事画像
 人気漫画「美味しんぼ」で福島の原発被害を取り上げ、その中で「鼻血が出たり、ひどい疲労に苦しむのは被ばくしたからです」と登場人物が語り、大きな問題に発展した。漫画を発刊している小学館ビッグコミックスピリッツの編集長は、きのう19日発売号で「不快な思いをされたことに責任を痛感する」と謝罪したが、一方で漫画の作者である雁屋哲さんは「2年間かけてしっかり取材した。私は真実しか書けない」とする姿勢を崩していない。

 ならば「鼻血」のあとの号で、岩手で出たがれきの焼却処分を買ってでた大阪で「お母さんたちが住民1000人ほどを調査したら、800人が鼻血や目、のどに不快な症状があった」とする表現はどうなんだ。被災地を取材し、「ぜひ大阪でがれきの処理を」とコメントしてきた私も、ついぞ聞いたことのない話だ。

 そもそも岩手で南の方に位置する釜石付近で、福島第1原発からは直線で250キロ。この距離は首都圏でいうと横浜付近まですっぽり入る。だとすると、首都圏で2000万人以上の人々が鼻血やのどに症状が出てもおかしくない。それが「しっかり取材した真実」なのか。

 国や自治体が本当のことを言わないからだ、と漫画を擁護する声があるが、それは違う。流言蜚語やデマゴークは、たしかに情報が隠されたり、ねじ曲げられたときに飛び交う。だが、そんなときに為政者に「本当のことを言え」と迫ることこそ、ペンを、カメラを持つものの仕事ではないのか。

 刈ったばかりの三陸ワカメのおいしかったこと。それにキンキにホヤに銀ザケ、シラウオ。忘れられないあの味も、風評被害に遭って福島どころか、東北というだけで半値以下に買い叩かれていると聞いた。

 「美味しんぼ」が、そんななかでも、こんな美味しいもの提供してくれている人たちを泣かせてどうするんだ。

(日刊スポーツ「フラッシュアップ」2014年5月20日掲載)




美味しんぼ(Wikipedia)
 http://ja.wikipedia.org/wiki/美味しんぼ
『美味しんぼ』福島の真実編に寄せられたご批判とご意見(ビッグコミックスピリッツ編集部)
 http://spi-net.jp/spi20140519/index.html
風評被害(Wikipedia)
 http://ja.wikipedia.org/wiki/風評被害



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