「熊手の手からウソが漏る」役人も笑うよ
— 歴史に残る喜美氏の迷言 —
子どものころ、家が目黒の大鳥神社に近かったこともあって、父が11月の酉の市で縁起物の熊手を買ってきていた。母が「熊手にはお金をかき集めるといういわれがあるんだけどねぇ」と、言外に一向にお金が集まらないわが家をぼやいていた思い出がある。その熊手がセコセコお金をかき集めるどころか、ドンと8億円もの金を手にした言い訳に使われるとは、びっくり仰天である。
7日に辞任したみんなの党の渡辺喜美代表が化粧品大手DHCの代表から8億円の資金提供を受けていた問題で、渡辺代表は、2度にわたった金の授受が、いずれも参院選、衆院選の直前だったのに選挙資金ではない、政治資金でもない。あくまで個人的な借金だとして、その使い道の例として「私、酉の市に参りまして、かなり大きなアレ(熊手)を買って帰ります」と、熊手を持ち出してきた。歴史に残る迷言、妄言。
渡辺さんには何度かお目にかかったことがある。いくらつぶしても、ゾンビのように生き返る役人の天下り先。巧妙に名目を変えては無駄な予算を復活させ、その蜜に群がる官僚。そんな役人たちに「言い訳は許さん」とギョロ目を剥いて切り込んでいた。だが、ことが自身に及ぶと、こんな言い訳でも通ると思ってしまうのか。
都営地下鉄と東京メトロの愚かな縄張り争い。そこに割って入った猪瀬前都知事は、徳洲会から提供された50000万円は個人の借金だとして、いつも自分が持ち歩いている鞄に入ると脂汗を流して実演してみせたが、結果は選挙資金。いまでは過去の人になった。
大阪府と市の二重行政。その壮大な無駄に切り込んだ橋下大阪市長は、従軍慰安婦について「当時は必要だった」。また「沖縄の米兵に風俗の利用を」と、ひんしゅくどころではすまない暴言を吐いて、いまや、かつての支持率は見る影もない。
公認やポスト欲しさの党員。面従腹背、お追従におべんちゃらの役人。そんな人たちに囲まれた党の代表に、知事、市長。かつては理想と信念に燃えていた人たちも、最初の1歩はどこへやら。いつの間にか我を見失い、世まい言を恥じらいもなく強弁するようになってしまうのか。
「上手の手から水が漏る」は、どんな名人でも思わぬ失敗をすることの例えだという。「熊手の手から嘘が漏る」。役人たちの高笑いと、嘲笑が聞こえてくる。
(日刊スポーツ「フラッシュアップ」2014年4月8日掲載)
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