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大雪 フラッシュアップ


大雪まつわる温かい話
— 群馬南牧村に電話取材 —

 日々、テレビが流すニュース。事件や事故、災害。起きたことを淡々とお伝えしているように見える。だけど、そんな無機質に思えるニュース番組でも、ときには伝えながら胸の中がほんわりしてくることもある。
日刊スポーツの実際の記事画像
 関東、甲州が豪雪に見舞われた先週は私が夕方、出演している「スーパーJチャンネル」(テレビ朝日)も連日、てんやわんやだった。大雪から2日たった17日月曜日になっても、各地で道路が遮断され、孤立地域が数十カ所にも上った。当然、そうした地域には取材クルーも入れない。こんなときはテレビの定番、孤立している村の中から群馬県南牧村の84歳の浅川種次郎さんと電話が繋がり、無理をお願いして生で声を聞かせてもらった。南牧村は群馬県西部の山間の村。人口2700人。65歳以上の高齢化率が57.9%と全国一だ。孤立状態に加えて、もう3日も停電が続いているという。

 キャスターの小木逸平さんとの電話で浅川さんは、買い物に行くにしても16キロ先の下仁田、食糧は冷蔵庫にあるものでなんとか持ちこたえている。暖房は幸いにして炭があるので、それをコタツに入れてしのいでいるが、寒さに凍えている。そんなことを淡々と話され、「換気には十分に注意して下さいね」という小木さんの呼びかけに、「ハイ」と答えたあと、「さっき青木さんが来てくれて、ホッとしました」とつけ加えた。突然出てきた「青木さん」に、スタジオは何がなんだかわからないままやり取りが続いたあと、無理を聞いて下さったことに感謝する私たちに浅川さんは「お役に立たないことで」と言って電話を切られた。

 声から伝わってくる純朴な人柄、こんな状態に高齢のご夫婦が身を寄せ合って懸命に耐えている様子がひしひしと伝わってきた。だが、番組を終えても、突然出てきた「青木さん」は謎のまま。

 とは言え、そこは機動力のあるテレビ局スタッフ。翌々日の19日には南牧村に入って、浅川さんご夫婦を取材。鴨居にご先祖様の写真が並んだ古い座敷。申し訳程度の炭しか入っていないコタツにちんまりと座っている浅川さん夫婦の姿が映し出された。取材で、青木さんは村で数少ない40代。その青木さんが、胸まで届く雪をかき分けながら高齢者のお宅に1軒1軒声をかけてまわられたのだと知った。

 なんだか、心のなかにほっこりと炭火がおこった思いだった。こんなときに何を呑気なことを、と言われそうだが、もう22年続いている毎年秋の私の群馬での講演。今年は足を延ばして、色づいた山々に囲まれた南牧村を訪ねてみたくなった。

(日刊スポーツ「フラッシュアップ」2014年2月25日掲載)



高齢化の状況|平成24年版高齢社会白書(内閣府)
 http://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2012/gaiyou/s1_1_1.html
なんもく村(群馬県南牧村)公式webサイト
 http://www.nanmoku.ne.jp/
群馬県南牧村(Google マップ)
 http://goo.gl/maps/a2mbp



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