本文へジャンプ サイトマップ 検索 ホームへ移動
ホーム 更新情報 Webコラム スクラップブック 黒田清JCJ新人賞 活動 事務所

フラッシュアップのコーナートップへ
スキー フラッシュアップ


かねや太鼓より静かに心から拍手
— 五輪の応援風景 —

 やっと少しばかり勝利の女神がほほえんでくれたソチ五輪。深夜から未明にかけて歓声が上がる一方で、「ハァー」というため息が日本中から漏れているのでは、と思う日もある。そんな五輪のニュースを日々届けながら、ちょっと違和感を覚えることがある。
日刊スポーツの実際の記事画像
 「わが町が生んだ五輪選手」と、それぞれの選手の出身地の市や町で応援に熱が入るのは、当たり前のこと。だけど、ときとして「なんだかなあ」と感じてしまうこともある。試合が始まる数時間前から市民会館や多目的ホールに日の丸の鉢巻き、ときにはハッピ姿の人も混じって、かねや太鼓で「ガンバレ!○○」。現地に行っている選手の両親に代わっておじいちゃん、おばあちゃんが照れたような、ちょっと心細げな顔でチョコンと座っている。テレビ局に頼まれたのだろうが、中学や高校の後輩たちがぎこちなく「フレーフレー先輩」。メダルに届かなかったとなると、悲鳴に近い声が会場を包む。

 もちろん現地にいる選手には、その様子は届かないのだからプレッシャーになるわけではない。ただ、私はこんな光景を見るにつけ、前回バンクーバー五輪のときの女子モーグル、上村愛子選手の言葉を思い浮かべてしまう。

 私が今大会でなんとかメダルを、と願っていた上村選手。34歳。5大会連続出場。それまでは7位、6位、5位、そして前回バンクーバーで4位。試合後、「なんでこんな1段、1段なんだろう」と、つぶやいた上村選手の言葉は大きく報道されたが、私はそのとき上村選手の口から自然に出た言葉がいまも心に残っている。

 4位に終わったとき、バンクーバーは氷雨が降りそそいでいて上村選手の黒いヘルメットも水滴で光っていた。コメントを聞こうと長時間待っていた記者たちも、ずぶ濡れ。そんな記者たちに上村選手は「私がメダルを取っていたら、みなさんのご苦労も少しは報われたのに、本当にごめんなさい」。そう言って静かに競技場を後にしたのだった。

 その上村選手は、ソチでもまた4位。だけど、泣きまねをしておどけてはみせたが、今回その目に涙はなかった。

 「そっか、また4位だったんだなと。メダルは取れなかったけど、でも、いまはすがすがしい気持ちです」と、五輪からの引退を宣言した。

 7、6、5、4位と来たのだから今度はメダルを、と多くの人が抱いていた願いも、またかなわなかった。だけど報われることを祈って、静かにじっと待つ。去って行く後ろ姿に、小さいけれど、心からの拍手を送る。そんな五輪の応援風景があってもいいのでは、と思うのである。

(日刊スポーツ「フラッシュアップ」2014年2月18日掲載)



上村愛子オフィシャルブログ
 http://blog.excite.co.jp/aikouemura
上村愛子(Wikipedia)
 http://ja.wikipedia.org/wiki/上村愛子
gorin.jp ソチオリンピック公式競技動画
 http://www.gorin.jp/



戻る このページのトップへ