特殊詐欺 まことに日本的な事件
— 諸外国なら「自分で解決しろ」 —
長年、事件の取材をしているが、こんな事件が頻発するとは予想もしていなかった。2013年の振り込め詐欺など特殊詐欺事件。警察庁は最多だった2012年を上回って過去最高の１万9000件余り、被害額も33％増の487億円に上ると発表した。
これまでオレオレ詐欺について、被害は全国最少、さすがお金を出すことには渋いと言われた大阪だが、ここにきて特殊詐欺の被害が増え、なかでも医療費や税金が戻ってくるという、いわゆる還付金詐欺と、「絶対もうかる」がうたい文句のギャンブル必勝法詐欺が急増しているという。さすが大阪、お金が入るとなると目がくらむなんて、そんなことを言っている場合ではない。
全国を見ると、いわば特殊詐欺の常道、息子や孫を装うオレオレ詐欺も息を吹き返して全体の半数近くを占め、被害額も前年を５割強上回って170億円。その被害者の半数以上が60歳以上のお年寄りだという。
私は、番組でこうした事件を報道するたびに「お年寄りはお金を振り込んだり、手渡しする前に、まず身近な人に相談を」とコメントしているのだが、じつはこうした現象に、被害者を責める気は毛頭ないものの、正直、げんなりしている。
そもそも欧米をはじめ諸外国からすると、こんな事件が起きることが信じられない、まことに日本的な事件なのだ。
息子や孫が「旦那がいる女性を妊娠させてしまった」「交通事故の相手がショックで流産してしまった」「飲んだ席のけんかで会社の同僚に大けがをさせてしまった」「使い込みが会社にバレてしまった」と電話してきたところで、「いい年した大人が何を言うか。そんなものは自分で解決しろ」と突き放すのが、諸外国では当たり前なのだ。いつまでたっても、愚かな息子や孫に祖父母や親がオタオタするのは日本だけだ。
もうひとつ。不倫相手を妊娠させてお金を払ったところで、将来的には訴訟を起こされて、裁判になる可能性がある。それに交通事故も、飲み屋の喧嘩も、使い込みも、きちんと司法の場で解決するべき事案なのだ。なんでもかんでもお金で解決できる。息子や孫に非を認めさせて反省させるというより、なんとかお金でケリをつける。お金でなかったことにしてもらう。根っこに、そんないやらしい思いがありはしないか。
わが日本国の為政者は諸外国との緊張関係を強調するのがお好きなようだが、私は、いびつな甘えのこの国は、やがて中から溶けてしまわないか。そんな心配をしている。
（日刊スポーツ「フラッシュアップ」2014年2月11日掲載）
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