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スタジオ風景 フラッシュアップ


「たぎる血」教えてくれた大先輩
— 政治評論家 岩見隆夫さんを悼む —

 テレビのスタジオで何度もご一緒した方がまた1人、逝ってしまった。毎日新聞特別顧問、政治評論家の岩見隆夫さん(享年78)。政治部と社会部出身の違いはあるが、新聞記者の大先輩。ひと言で言うと、私に「じっくりとした重層なものの見方」を教えてくれた方という気がする。
日刊スポーツの実際の記事画像
 もう10年以上前になるが、テレビ朝日の「やじうまワイド」や「やじうまプラス」という早朝番組で一緒に出演していた。だが一時期、視聴率アップを狙う局側の意向で、番組をいわゆる情報系、やわらか路線に切り換えることになって私たちは降板。コメントもタレントたちがあれこれおしゃべりする形になった。結局、この路線は大失敗。私たちはわずか半年後には復帰することになるのだが、その路線変更が決まったときの岩見さんの怒りはすさまじかった。

 司会の局アナを含めて、ご自分の行きつけの四谷のお店に集合をかけ、ちょっと大げさに言うと、討ち入り前夜。岩見さんは番組を降板させられたことやタレントたちに怒っているのではなかった。政治や悲惨な事件を単純化して捉え、一方的な見方を述べる。それを「わかりやすさ」と勘違いしていることに我慢がならなかったのだ。座敷で仁王立ちになって「テレビを夜店の香具師(やし)にしていいのか!」と言い放ったときの姿が忘れられない。

 酒豪、あの太鼓腹、独特な短い白髪。その風貌の通り、人を包み込むようなおおらかさと、温かさがあった。ともすれば保守政党大嫌い、政権政党に対しては、食ってかかったり、批判めいたことばかり口にする私を、保守本流の政治を半世紀にわたって取材してきた岩見さんは「そう決めつけてやるなよ。外交に安全保障、内政、一国の命運を担って政治を進めて行くというのは並大抵の苦労じゃないんだよ」と、やんわりとたしなめてくれるのだった。

 新年のサンデー毎日の連載では、憲法改正について10年前、当時88歳の故三木睦子さんが「燃えたぎる心の中の血を燃え立たせている」とトツトツとした言葉で改憲に反対したことにふれ、<2014年安倍首相は「九条の会」の大江健三郎代表世話人と是が非でも公開討論を開き、国民の目の前で、耳に聞こえるところで「たぎる血」のほどを語り合うべきである。詳細は次号で>と書かれていた。だが、その「詳細」を読ませていただくことはついになかった。

 絶筆となった月刊誌、「中央公論」の原稿は「政治記者の総決算」として「日本政治の“せっかち”を叱る」。

 ゆったりと杯を運んでおられた姿が目に浮かぶ。

(日刊スポーツ「フラッシュアップ」2014年1月28日掲載)



岩見隆夫(Wikipedia)
 http://ja.wikipedia.org/wiki/岩見隆夫
「九条の会」オフィシャルサイト
 http://www.9-jo.jp/
サンデー毎日: 2.岩見隆夫のサンデー時評
 http://sunday.mainichi.co.jp/blog/2/index.html



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