いまも耳に残る哀しい沖縄の叫び
— 「どこが負担軽減」影が光を覆いだした年末 —
大みそか、本年最後のフラッシュアップ。今年も師走の声を聞くと同時にテレビやラジオ、雑誌などから「2013年はどんな年だった?」とコメントを求められた。私は、たいてい「光と影の年」と答えていた。
光は言うまでもなく、2020年五輪の東京開催決定。多くの人が自分の年に7つ足してみたのではないだろうか。「オリンピックを東京に」と言い続けてきた私は大満足。それに薄日だとか、一瞬の晴れ間と言われながらも、アベノミクスとやらで一筋の光が見えたことも確かだ。
だが、年も押し迫ったころから陰りが見え始めた。天下の悪法と言われる特定秘密保護法の強引な成立。福島のことなんか忘れました、と言わんばかりの原発再稼働の動き。余すところあと6日となってから、安倍首相の突然の靖国参拝。そしてその翌日、政権与党に屈した仲井真沖縄県知事の辺野古埋め立て承認。愚かな1人の宰相のもと、影が光を覆い尽くし始めた。
辺野古埋め立て承認のニュース聞いて私は、9月、翌日の講演のため最終便で沖縄入りしたときのことを思い出した。オリオンビールのジョッキを前に地元の記者と深夜の懇親会。「辺野古のことは、ほとんど全国紙の紙面に載りません。本土の人は、いずれは埋め立て承認と思っているのでしょう。でも、米軍基地を沖縄のあっちからこっちへ移してどこが負担軽減なんですか!」。怒りというより哀しみに満ちた記者の叫びが、いまも耳に残っている。
だが、振興予算満額以上という札びらで沖縄の横っ面を張り飛ばした翌日、首相は突然の靖国参拝。米国は即日、異例の「失望」の声明を出した。「くれぐれも東アジアの安定を」という米国の要望を逆なでしておいて、普天間の5年以内の返還も、日米地位協定の改定もあったものではない。自分から中国、韓国との間を波立たせておいて、基地を返せ、日米の地位を見直せはないだろう。どの面下げてそんなことを頼みにくるのか、というのがアメリカの本音に違いない。この首相の頭の中は完全に、でんぐり返っている。
沖縄を訪ねた深夜、名残惜しそうに席をお開きにした記者たちは、いまこのニュースをどんな思いで聞いているだろうか。
年の瀬、いてつく寒波の襲来。だが、それは大陸からの寒気団のせいだけではないような気がする。列島を覆い尽くした暗く長い影。2014年は、せめてこの影を少しでも振り払って、やわらかで、やさしい光に包まれたい。みなさま、どうぞよいお年を。
(日刊スポーツ「フラッシュアップ」2013年12月31日掲載)
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