権力の凶器、使わせぬ戦いを
— 秘密保護法ドタバタ成立 —
ドタバタの特別委員会採決。日を改めての参院本会議。賛成にまわった人たちは、一度でも自分の頭でこの特定秘密保護法のことを考えたことがあるのか、後世に責任を持てるのか。この法律では秘密を漏らした国会議員も懲役5年以下の刑が科せられる。官僚に秘密を決められて、それにさわったら自分たちも罰せられる、そんな法律を夜を徹してでも可決してやる。失礼ながら、この人たちの顔がみんなバカ面に見えましたね。
特定秘密保護法案について、私たちは緊急声明を出したり、集会を開いてきた。闘いの先頭に立たれた海渡雄一弁護士や沖縄密約事件の西山太吉さんもインタビューしてテレビで放送させていただいた。だが、巨大与党を前に、それは流れにもみくちゃにされる小石のようなものにすぎなかったかもしれない。だから、そうした行動を取りながら、私は負け惜しみでなく、闘いはこの先にあると言い続けてきた。
お会いした沖縄密約事件の西山さんは、いま82歳。私とのインタビューのために北九州から名古屋に来てくださって、翌日から1泊で沖縄へ。その翌日は京都。私より1回り以上も上なのに、じつにお元気だ。その西山さんは「この法律は、国民は主権を奪われて権力から取り締まられる側に追いやられる、そういう法律だ」と、約1時間半のインタビューのあと、生ビールを飲み干しながら意気軒昂だった。負けてはいられない。
では、どうするか。残念ながら、絶対にその手には持たせないと戦ってきた刀というか凶器は、権力の側に渡ってしまった。ならば、その刃(やいば)を絶対に抜かせないことだ。抜くなら抜いてみろ。こちらもただでは切られない。お互い、血まみれ、血みどろの戦いになる。そう思わせておくしかない。それが嫌なら絶対に抜くな。いくらこんな法律を手に入れたって、抜けなければ、宝じゃなかった、凶器の持ち腐れ。なんのために、あんなにムキになって法律を通したのか、そう思わせるしかない。
だが、官僚は議員ほど愚かではない。弾圧的な法律は、あの治安維持法がそうだったように次第次第に国民をがんじがらめにしていく。特定秘密保護法にしたって、1、2年でジャーナリストや市民を逮捕することはあるまい。そんな法律があったっけ、と忘れかけたころに、ブスッと腹に刃が突き刺さってくるはずだ。だからこそ、「抜かせるものか、抜けるなら抜いてみろ」と叫び続けるしかない。
(日刊スポーツ「フラッシュアップ」2013年12月10日掲載)
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