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「取材の自由」条文化しないワケ
— 特定秘密保護法案審議 —

「伏せられて放置されている紙を裏返して閲覧して写真撮影する」「省エネ型のパソコンがスリープ状態になっているものを起動させて閲覧する」。これらはいずれも不当な取材には当たらない。特定秘密保護法案の審議で、森雅子担当大臣は、こんな答弁をしてみせた。びっくり仰天。先日会った古いつき合いの腕っこきの記者は「今度、取材でクレームがついたら、これを見せるんだ」とうれしそうに記事が載った新聞の切り抜きをポケットに入れていた。
日刊スポーツの実際の記事画像
 その記者も私も、そんな取材はしたことがない、とまでは言わないけど、それが不当なものであることはわかっている。それなのに担当大臣たるものが、なんでこんなに何でもOKというのか。下心ははっきりしている。こうやって大盤振る舞いをしているふりをして、この法案にある「国民の知る権利には十分に配慮する」とか「取材は違法または著しく不当な方法でない限り正当な業務とする」。こんな曖昧で危うい文言をどうしても残しておきたいのだ。

 本当にこれらを侵さないというのであれば、「国民の知る権利はこれを保証する」「報道、取材の自由には、この法は適用されない」と、なぜ条文に明記しないのか。20年後、30年後、記者が特定秘密をスクープして逮捕され、弁護団がほこりまみれのこんな国会の議事録を探し出して法廷に提出したところで、検察、裁判所が「そんなやり取りと法律は関係ない」と一蹴されたら、それで終わりだ。

 彼らはあくまで、法律の条文にのみ沿って判断するのだ。パソコンを勝手に起動させて内容を盗み見るといった行為は、「配慮」の範囲をはるかに逸脱し、「著しく不当な方法」と断じられたら、法律的には、なんの抵抗もできない。

 なぜ政権は、知る権利や報道、取材の自由についてかたくなに条文化しないのか。いずれはそこに手を突っ込みたいからに決まっているからではないか。こんな危ない法律が、今週中にも衆院で可決されようとしている。

 先週、田原総一朗さんや鳥越俊太郎さん、私たちキャスター、ジャーナリスト8人が、こんな法案を通してはならないと、反対の共同声明を出した。だが、巨大与党を前に、その力はまことに弱い。今度は新聞、雑誌の記者にも呼びかけて、明日20日に都内で改めて大きな集会を開いて法案の即時撤回を求める声明を採択、その足で国会に要請書を提出することにしている。

 20年、30年後 、あのとき、ジャーナリストは、いや、あのとき、日本国民は一体何をしていたんだと言われないために。

(日刊スポーツ「フラッシュアップ」2013年11月19日掲載)



秘密保護法案:「知る権利侵害」 キャスター8人が声明(毎日新聞)
 http://mainichi.jp/select/news/20131112k0000m040074000c.html
秘密保護法案(Yahoo!ニュース)
 http://dailynews.yahoo.co.jp/fc/domestic/protect_national_secrets/
特定秘密保護法案に関するトピックス(朝日新聞)-
 http://www.asahi.com/topics/word/特定秘密保護法案.html



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