ストーカー2万件に完全対応あるのか
— 三鷹刺殺事件と警察 —
日ごろ警察に対して厳しい指摘をすることの多い私だが、今回は、決して警察を擁護するわけではないが、こういう見方をしているということを書いておきたい。
東京・三鷹市で私立女子高生が(18)が21歳のストーカーの男に殺害された。女優を夢見る一方で、将来は海外でも活躍したいと英語を熱心に学んでいた女子高生の命を断った罪は断じて許されるものではない。
ただ、例によってメディアは警察の対応を取り沙汰している。学校の担任教師から相談を受けた杉並署が自宅のある三鷹署に行くように指示したのはタライまわしではないか、連携の悪さではないか、と批判する。
だけど、女子高生の自宅が三鷹にあって男が家のまわりをうろついているとなれば、所轄の三鷹署に行くように指示するのは当たり前ではないか。学校の教師を杉並署に呼んで事情を聞いて書類を作って三鷹署に送付してと、二度手間三度手間ではないか。手あかのついた批判のための批判と言うしかない。
とは言え、結果、最悪の事態となったことは間違いない。ただ、警察庁はストーカーの危険度判定の作成を急いでいるが、見知らぬ人に待ち伏せやつきまといをされているケースと、それまで結婚、同棲、あるいは交際していた、という場合とでは、どうしても対応は変わってくる。後者のケースでは、「別の人とつき合い始めたので、前の男が邪魔になった」なんて身勝手な相談まである。
ただし、今回、警察は家族も含めてしばらく家を出るように説得すべきだった。2009年、千葉市では自宅で被害者の母親が、2011年、千葉・習志野の事件では遠く離れた長崎県西海市で、やはり被害者の母と祖母がストーカーに殺害されている。本人はもちろん、親族も自宅にいるのは危険極まりないのだ。今回、なぜ1人で登下校し、家族がいなかった自宅に帰ってしまったのか。悔やまれてならない。
「警察がしっかり警護すればいい。あんたは警察の代弁者か」という声もあるだろう。ならば、昨年1年間に全国で認知されたストーカー被害は1万9920件。前年比のじつに36%増だ。1人の人間を24時間警護するとしたら、警察官は最低5、6人。パトカーも2台はいる。親族も、となると2倍3倍だ。全国の警察官は26万人。危険度にもよるが、隙のない警護をしていたら日本の警察がどんな状態になるか、子どもでもわかる。
批判のための批判はもういい。ストーカー被害をどう抑えるのか。被害にあったらどうすればいいのか。実りのある議論を進めようじゃないか。
(日刊スポーツ「フラッシュアップ」2013年10月15日掲載)
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