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伊勢神宮 フラッシュアップ


遷宮と原発が教えてくれるもの
— 1300年の歴史に思う —

 日ごろは事件だ、事故だ、災害だと、どちらかと言えば殺伐とした中にいる私だが、先週は、いつになく清新な世界にいた気がする。2日夜、伊勢神宮の20年に1度の式年遷宮で内宮のご神体を新しい正殿に移す「遷御の儀」があった。5日には豊受大神を祭る外宮でも遷御の儀が行われ、1300年続いてきた遷宮の行事は滞りなく終わった。
日刊スポーツの実際の記事画像
 じつは私の父は、かつての三重県度会郡城田村、現在の伊勢市中須の出身。私のルーツは伊勢にあるのだ。子どものころ父に連れられて、何度かお伊勢さんに参った。前回の遷宮、1993年、父は「今度の遷宮は見られるかな」と言いつつ、残念ながらその年の2月に84歳で亡くなった。

 そんな縁が私を引き寄せてくれたのか、遷御の儀が始まる3時間ほど前には、夕方の「スーパーJチャンネル」(テレビ朝日系)で伊勢神宮からの中継を交えて放送。番組を終えて名古屋に入ると、地元局がそろって先ほど執り行われた遷御の儀の模様を伝えていた。翌朝はメーテレ(名古屋テレビ)の情報番組「ドデスカ」で早朝から木の香漂う新正殿にお参りしてきた人々の声を伝えた。

 昨年秋には、やはり名古屋の東海テレビの取材で白いベールに包まれていた新正殿を前に20年に1度の遷宮の意味合いを聞かせていただいた。そこに流れるのは、神様に常に新しいものを差し上げるという「常若(とこわか)の精神」。だから遷宮は社殿を造り替えるだけではなく、装束や神宝など1600点も、すべてこのとき新調する。その遷宮を持統天皇4年(690年)から、戦国時代の約100年、昭和の終戦直後の延期を除いて、1300年絶えることなく続けてきたというのだから、その歴史の重さが胸を打つ。

 常若の精神で驚かされるのは神様に毎朝差し上げる食事、御饌(おおみけ)は必ずその朝、木をすり合わせておこした火で煮炊きするということだ。それを1300年も…。

 そこに連綿とつながっている心は、火、水、木、米に塩、そしてアワビなどの海産物、すべて神からの恵みによって私たちは生かされているということではないか。自然に対する畏れ、敬虔、謙虚さ。それらを改めて思い起こさせてくれるのが、遷宮の意味合いでもあるのではないか。

 この週、私たちが遷御の儀と並んで、多くの時間を割いてお送りしたニュースは原子の火、原発からの汚染水がアンダーコントロール、制御できているのかということだった。火、水、そして自然の恵み。私たちは、それらに対する畏れも、謙虚さも、いつしか忘れてはいないか。そんなことを思わせる週でもあった。

(日刊スポーツ「フラッシュアップ」2013年10月8日掲載)



遷宮(Wikipedia)
 http://ja.wikipedia.org/wiki/遷宮
伊勢神宮:式年遷宮
 http://www.isejingu.or.jp/shikinensengu/
祭りと伝統行事(Yahoo!ニュース)
 http://dailynews.yahoo.co.jp/fc/local/festivals_and_conventions/



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