大阪をどうするか 橋下さん話しませんか
— 維新敗北 堺市長選 —
「堺はひとつ。堺を消さない」と大阪都構想反対を訴えた現市長の竹山修身さんと「堺の町をワン大阪に」と大阪都構想を掲げた大阪維新の会の西林克敏さんの一騎討だった堺市長遷は、竹山さんの圧勝。連日、西林さんの応援に駆けずりまわった日本維新の会代表の橋下徹大阪市長は地にまみれた。
維新は都議選、参院選に次ぐ３戦惨敗。あの橋下人気も今は昔。そんななか、私は「歯牙にもかけない」という表現をめぐって橋下さんとやり合ったことを思い出している。あれは橋下さんが大阪都構想を引っさげて府知事から大阪市長に転進した２年前。テレビ番組で「中央政界は党利党略、派利派略。大阪という一地方都市のことなんて歯牙にもかけていない」と言った私に橋下さんはいたくご立腹。以後、顔を合わすたびに「歯牙にもかけないを取り消せ」と迫ってきた。
でもね、今度のことで党利党略の意味がよくわかったんじゃないのかな。野党時代、あんなにエールを送っていた自民党は巨大与党となったいま、維新なんてもういらないと大阪府連は竹山推薦。さすがに党本部は手の平返しはできないとしつつも竹山支持。
一時は都構想への法案を２つ３つ通してみせた民主党も昨年の衆院選大敗の一因は維新躍進にあったと八つ当たり。まっさきに竹山推薦に走った。大阪市議会で蜜月だった公明党も慰安婦問題などで維新についていたのでは身が持たないと、「勝手に投票してくれ」の自主投票。組合つぶしや君が代、憲法、維新憎しの急先鋒、共産党は独自候補を立てずに竹山熱烈応援。維新つぶしのためなら、自民とだって仲良しこよしになるのだ。
おっと、極めつきを忘れていた。たった一度、西林応援に入った維新の石原共同代表は、演説で「現憲法はＧＨＱの押しつけ」などと延々持論を展開。「大阪の話を聞きにきたんや」とやじが飛ぶと、「大事な話だ。失礼なやつ、（前に）出て来い！」とブチ切れた。
どの党も、どころか同じ党でさえ、堺のサの字もなければ、大阪のオの字もない。党利党略、派利派略。これぞ「大阪を歯牙にもかけない」と言わずして何と言う。とはいえ、私は敗走に敗走を重ねる橋下さんに「ホラ、言わんこっちゃない」と追い打ちをかける気はない。私が言わずとも秋風が身に沁みているはずだ。
では、どうするか。私も橋下さんも、じつは東京生まれ。だけどいまでは大阪大好き、大阪がふるさと。ならば原点に帰って大阪をどうするか、橋下さん一度、じっくり話しませんか。ふるさとの話をしようではありませんか。
（日刊スポーツ「フラッシュアップ」2013年10月1日掲載）
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