最後までやることおかしい加藤コミ
— 球界に配慮ゼロの人 —
早朝のテレビ番組の打ち合わせ。届いたばかりの新聞各紙を手にして、嫌な思いが胸にわき上がってきた。プロ野球コミッショナーの加藤良三さんの辞任を読売と報知の2紙が伝えていたのだ。このときは手元になかったが、じつは産経もなんとか1面(大阪のサンスポは裏面)に載せてはいるが、読売と報知は加藤さんとの一問一答まで添えて実質的なスクープだ。
読売といえば、言わずと知れた巨人軍のオーナー会社。加藤さんはプロ野球12球団を統括する立場でありながら、19日の正式表明を待たずに1球団のオーナー会社に辞意を明かし、そこに至る心境までペラペラしゃべっていたのだ。この人、最後までやることがおかしい。そんなことをさせる読売もおかしい。
本人も認めている通り、統一球、飛ぶボールの導入をめぐるゴタゴタが根っこにあることは確かだ。6月、この問題が発覚したとき、「まったく知らなかった」とする加藤さんを追及し続ける記者に、元駐米大使のプライドが許さないと感じたのか、この方、かんしゃく玉を破裂させて「今回の件を不祥事だとは思っておりません!」。
ならば、ヤクルトの宮本選手が「もう少し、そういう配慮ができる方だと思っていたのに」と指摘する通り、なんでこの時期なのだ。ペナントレースは佳境に入り、田中マー君は連勝記録を伸ばしている。なかでも、バレンティン選手が巨人軍の王選手が持つ55本の日本記録を破って、57、58号とホームランを打ちまくっている。そんなときに、飛ぶボール問題の責任を感じて巨人軍のオーナー会社に、まず辞意を明かした。そのボールを打っているバレンティン選手にも、また「もっともっと打て」と称賛の声を惜しまない元巨人の王さんに対しても、これほど非礼なことがあるか。
なのに、このオーナー会社はいま、その王さんを加藤さんの後釜に据えようと水面下で必死に画策していると聞く。せんえつながら、王さんはそんな話には乗らないでほしい。もう何年も前になるが、球団名がダイエーからソフトバンクに変わったころ、テレビ朝日のかつての「サンデープロジェクト」でご一緒した。帰りしな、おバカな巨人ファンである私が「いつかまた巨人に戻って」と話しかけると、王さんはやんわりとした口調だったが、例のギョロ目を私に向けて、ただひと言、「野球は楽しくやりましょうよ」。
ホント、白球を追っている少年少女にも、スタンドで、テレビの前で声を張り上げている私たちにも、野球は楽しいものでなければいけません。この一件、私は「大変な不祥事だ」と思っているのです。
(日刊スポーツ「フラッシュアップ」2013年9月24日掲載)
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