本文へジャンプ サイトマップ 検索 ホームへ移動
ホーム 更新情報 Webコラム スクラップブック 黒田清JCJ新人賞 活動 事務所

フラッシュアップのコーナートップへ
風鈴 フラッシュアップ


不屈の忍耐力、自制力、勤勉…日本人は捨ててしまったのか
— 安倍首相戦没者追悼の式辞に思う —

 8月は、人の命と向き合い、人との縁(えにし)を感じる月だという気がする。広島、長崎の原爆忌。終戦の日。そして先祖を迎えて送るお盆。
日刊スポーツの実際の記事画像
 そんな夏、いま公開中のハリウッド映画「終戦のエンペラー」(松竹配給)のテレビCMが流れてくると、少し心が揺れる。この映画は公開前に松竹のご厚意で試写を見せていただき、その後、毎日新聞のインタビューを受けた。

 じつは映画の原作となった「終戦のエンペラー 陛下をお救いなさいまし」(集英社文庫)の著者、岡本嗣郎君は早稲田大学ジャーナリズム研究会の1年後輩。彼は毎日、私は読売と進んだ新聞社は違ったが、ともに途中で退社、フリーの道を選んだ。冗談好き、面白いこと大好き。麻雀の腕はまるでダメ。だが、彼の退社後の執筆欲はすごかった。

 そんな岡本君が靴底をすり減らして人に会い、膨大な資料を読み込んで世に問うたのが、この作品だった。だが、いま思えば、彼は生き急いでいたような気がする。2003年、大学時代の仲間と彼を見舞った数カ月後、57歳の若さで他界してしまった。それから10年、彼の作品は超大作の映画となってよみがえった。

 映画には、原作にない日米間を懸ける淡い恋物語も盛り込まれているが、大きな柱は、あの大戦に対する昭和天皇の戦争責任。連合国軍総司令部のマッカーサー元帥から天皇の戦争責任の調査を命じられたフェラーズ准将は、多くの日本人に会い、徹底的に日本人の思考を探った結果、天皇の責任追及をしないことを進言する。だが、岡本君は著書の中で、連合国側がそのことを決断するにあたって日本に課した絶対不可欠な条件は、憲法9条の遵守。平和国家日本への誓いだったと断言している。

 日本を去るとき、フェラーズは懇意にしていた日本の友人に宛てた手紙で「日米両国は互いに学び合えることがある」として、「日本人の不屈の忍耐力、自制力、勤勉は、ほかに例を見ないでしょう。他方、アメリカの寛大、思いやり、同情心はアメリカ人の誇りです」と書き、「真の指導者が現れたとき、日本の発展は驚くべきものになるでしょう」と記している。

 だが、安倍首相は終戦の日、戦没者追悼の式辞で、これまで歴代首相が述べてきたアジア諸国への加害と、わが国の不戦平和の誓いはスッポリ抜いてしまった。日本人が誇るべき忍耐と自制。そしてアメリカから学ぶべき、寛大と思いやり。私たちの国は、それらをもう、かなぐり捨ててしまったのだろうか。

 10年前、岡本君が逝ったのは8月6日、広島原爆忌の日だった。

(日刊スポーツ「フラッシュアップ」2013年8月20日掲載)



映画『終戦のエンペラー』公式サイト
 http://www.emperor-movie.jp/
平成25年8月15日 全国戦没者追悼式式辞 | 首相官邸ホームページ
 http://www.kantei.go.jp/jp/96_abe/statement/2013/0815sikiji.html
戦争の加害責任に触れない式辞をどう思う?(Yahoo!ニュース 意識調査
 http://polls.dailynews.yahoo.co.jp/domestic/9778/vote



戻る このページのトップへ