故ヘーシンクさんの言葉…謙虚さが何より大事
— 猪瀬知事へのメール —
KLMオランダ航空スポーツ大使の今野充昭さんとは、もう30年のおつき合いだ。新聞記者時代、オランダ取材でさまざまお世話になったのが縁だった。今野さんは、埼玉大学空手部時代、空手の普及のためオランダに滞在、そのままオランダに居ついてしまった。だが、いまは空手の普及だけではない。スポーツ振興のため、オランダ人の奥様と2人の子どもをアムステルダムに置いて世界中を飛びまわっている。
最近は、あの東京オリンピックよ、もう一度。2020年東京五輪招致に向けて、陰に日なたに応援してくれている。その今野さんからメールが届いた。2020年五輪の開催地を決める9月7日を目前に、猪瀬直樹東京都知事宛てにメールを送っているのだが、何しろ忙しい方。読んで下さっているかどうかわからない、と言って私にも同じメールを送ってくれたのだ。
ならば私には、この日刊スポーツのコラムがある。今野さんの人なつっこい笑顔と、ふるさと山形の米沢なまりを思い出しながら、知事宛てのメールを転載することにした。
<猪瀬知事殿 いよいよ開催地決定まで秒読み。今後、ミスは一切できないという状況を思うとき、出過ぎたこととは思いますが、招致に少しでもプラスになれば、と記させていただきます。まず第一に「お金はある。それに日本は安全です」などということは今後、言われない方がいいと思います。それを言えば、お金がなくても開催したいマドリードへの同情票が生まれてしまいます。また安全に関しても、ある程度注意すればマドリードもイスタンブールも、世界の中では安全な方なのです。
そこで私が親しくしていた(東京五輪柔道金メダリストのオランダ選手)故・ヘーシンクさんの素晴らしい言葉をここに記させていただきます。氏が存命であれば、きっと心から東京を応援して下さったと確信しております。氏はIOC委員として、これまで開催成功国にこんなアドバイスをしてこられたのです。
1.何はさて置き「選手のため」ということを強調する 2.他国の悪いところは言わない 3.「また同じようなことを」と思われることは言わない 4.「今度は私たちの番」ということは言わない 5.全ての可能性を謙虚に言う。そこでは謙虚さが何より大事──
これらを踏まえ、9月7日、南米アルゼンチンの地で、青い炎のような素晴らしいプレゼンが行われることを願っております。最後に知事の奥様のご冥福をオランダの地より心からお祈り申しあげます>
猪瀬知事、私も9月7日、聖火につながる青い炎が燃え上がることを祈っております。
(日刊スポーツ「フラッシュアップ」2013年8月13日掲載)
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