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野球 フラッシュアップ


大切な国を揺らす愚かな声…情けない
— 高校野球に沸く日本の夏は、いいのだが… —

 ホテルのバーでひとりグラスを傾けていると、20年来のおつき合い、普段は口数の少ない女性のバーテンダーが珍しくニコニコしながら話しかけてきた。
日刊スポーツの実際の記事画像
 先日、バーテンダーの腕を競うカクテルコンペのあった日、後輩のバーテンが「きょうは、大変な日ですね」と声をかけてきた。その日は夏の高校野球、西東京大会の都立日野高対日大三高の決勝戦。「じつは私も後輩も日野高の出身なんです。コンペの間、神宮に応援に行っているかつての同級生から、刻々、試合経過のメールが入って、コンペも気になる、決勝も気になるで、大忙しの一日だったんです」

 西東京大会で日野高が勝てば、都立としては国立高以来、実に33年ぶり。だが、結果は5−0で日大三高。「惜しかったね」と言うと、「でもね、私、弟が日大三高なんです。母はその日、大変だったみたい」。「へぇー、姉弟対決と言えば同じ西東京で、僕の母校は兄弟校対決だったんだ」。

 私の母校、早大学院は兄弟校の早稲田実業と三回戦でぶつかり、同じ応援歌が神宮の杜に流れた。3年前は、ともにベスト4まで進んだ両高だったけど、今回は9−2でわが母校がコールド負け。すると、もうひとりのバーテンが「僕は今度、西東京に編入された国士館。いま奥にいるのは、岩手の花巻東なんです」。「そう言えばこの夏、日野高は惜しかったけど、滋賀は彦根東、奈良は桜井。公立高がすごいよね」。

 いつもは静かにピアノの演奏が流れるバーは、いつの間にかアルプススタンドの応援席。49の代表校が出揃って、母校が甲子園の土を踏んだ卒業生は引き続き母校の行方に固唾を飲み、代表校にならなかった人は、今度は、わがふるさとの高校の応援にまわる。猛暑や局地豪雨にふりまわされながらも、いいな、日本の夏は、と思う。

 だけど、そんな夏に、選挙の間はアベノミクスとやらの金もうけ話の裏に隠しておいたタカの爪が、次第次第に姿を現している。憲法改正、愛国心、国家のための秘密保持……いや、次第次第どころではない。あろうことか、一国の副総理が「気がついたら、ナチス憲法に変わっていた。あの手口を学んだらどうか」と言い放った。日本の改憲を、あの狂信的な愛国心とユダヤ人虐殺のナチスに学べという。世界中が凍りついた。

 怒りを通り越して、情けなくなる。下卑(げび)たダミ声で世界中から見放されることを口走らなくとも、私たちは母校が好き、ふるさとが好き。何より大切な家族と暮らす、この国が大好きなのに。

 政治が愚かで、かなしく見えてくる。

(日刊スポーツ「フラッシュアップ」2013年8月6日掲載)



朝日新聞デジタル:高校野球
 http://www.asahi.com/koshien/
高校野球(Yahoo!ニュース)
 http://dailynews.yahoo.co.jp/fc/sports/highschool_baseball/
ナチス+麻生(Google 検索)
 http://www.google.co.jp/search?q=ナチス 麻生&num=100&newwindow=1



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