1歩も引くな、プロ野球選手会
— 加藤コミッショナーにダメ出し —
スポーツは何をやらせてもからっきしダメなくせに、見るのは大好きだ。水割りをかたむけながら、あのプレー、このシーンについて語り合うのも大好きだ。スポーツをひと言で語るなら、それは「人々を元気づけるもの」。だから、そこに人々の心をなえさせるもの、人々の心を遠ざけるものがあってはならないと思っている。
統一球問題でついに労組・プロ野球選手会(楽天嶋基宏会長)が日本野球機構(NPB)あてに、新しいコミッショナーによる体制を求める要望書を提出した。加藤良三コミッショナーを「消極的で責任回避的な人物」と手厳しく批判。「ビジョンと責任を持った人物の登用」を強く迫っている。当然のこととは言え、やるねえ、嶋会長、1歩も引くな、選手会。
いまさら最高責任者でありながら、統一球のことは知らなかったという現コミッショナーにあれこれ言っても詮(せん)ないこと。ただ、相撲界、柔道界、そして、いまのプロ野球。機構や連盟、上部団体が疲弊、腐敗しているスポーツは間違いなく、アスリートからもファンからも見放されていく。
プロ野球のテレビ中継が地上波からほとんど消えて、観客動員数も年々落ちていく。お家芸にあぐらをかいていた柔道は金メダルから遠ざかり、選手人口はとっくにフランスに抜かれている。大相撲本場所のガラガラの客席は観ていてこちらまで寒々としてくる。
だが相撲界も柔道界も同じ幹部が居座り続け、プロ野球は震災の年の開催日をめぐって、コミッショナーは「たかが選手」と言い放つ某オーナーの言いなり。そこにはスポーツのさわやかさなどみじんもない。そんなスポーツにファンがついてくるはずがない。ファンは、ときには理不尽なことにも耐えなければならない人の世にあって、一陣の涼風をスポーツに求めているのだ。
スポーツニュースで聞いた震災の年の開幕日の嶋選手会長の言葉を思い出す。
震災のとき、兵庫にいた楽天の選手は開幕5日前、やっと仙台に戻ってきた。そして、変わり果てた東北の地を目と心に焼き付けたという。
<この1か月半で分かったことがあります。それは誰かのために戦う人間は強いということです。東北のみなさん、絶対に乗り越えましょう、このときを。いまこのときを乗り越えた向こう側には強くなった自分と、明るい未来が待っているはずです>
プロ野球の選手、ファンのためだけではない。日本のスポーツ界のために戦う、強い選手会であってほしい。このときを乗り越えて、明るい未来を引き寄せてほしい。
(日刊スポーツ「フラッシュアップ」2013年7月2日掲載)
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