選挙のためならオスプレイも使う
— 普天間より住宅密集の八尾空港 —
下心が最初から透けて見えるどころかミエミエなのに、それに乗っかる政権もメディアもどこか狂っている。日本維新の会代表・橋下大阪市長が唐突に沖縄・普天間飛行場のオスプレイ訓練の一部を大阪・八尾空港に移転させたらと言いだした。
従軍慰安婦発言で国内どころか諸外国からも猛反発を食らって、顔面青タン赤タンだらけ。加えて、聞かれてもないのに沖縄米軍の風俗活用案までペラペラしゃべってアメリカ社会をカンカンに怒らせ、姉妹都市のサンフランシスコ訪問まであきらめざるを得ない状況。なんとか目先を変えて、この窮地を脱しようと「八尾」を出してきたことは、子どもにだってわかる。
沖縄の基地負担軽減については私もあちこちで書いたり、しゃべったりしてきた。だから、橋下さんが大阪府知事時代、普天間の移設先に不便このうえないことに加えて赤字続きの関西空港を挙げたときには、「おっ、思い切ったことを言うなあ」と感心した。だけど、結果はいつもの「言ってみただけ」。今度の件だって、沖縄の苦悩がまた本土にもてあそばれたということになりかねない。
普天間飛行場は隣接する第二小学校を含めて、何度も取材した。米軍でさえ認めている「世界一危ない飛行場」であることは間違いない。一方、八尾空港は民放各社がヘリ基地としているので、私も何度も利用した。周辺に住宅が密集しているのは普天間以上だ。加えて、20〜30キロの範囲に関空、神戸、伊丹の3空港がひしめき、海上は明石海峡大橋の下を多数の船が通る主要航路だ。
陸海空がそんな状況の地域で「ウイドーメーカー」とまで呼ばれる危険なオスプレイの訓練をさせるというのか。何より事故を最も恐れる米軍が、こんな空域で訓練するわけがない。
そもそも、オスプレイに関しては、日米協議で日本中どこでも訓練飛行ができることになっている。さらに訓練拠点はキャンプ富士と岩国基地とされ、米軍はそれ以上の拠点を求めていない。余計なお世話を焼かれた米軍は目を白黒させているに違いない。
参院選を前に落ち目の維新・橋下さんにしてみれば、取りあえず人気の高い安倍政権に、にじり寄っておきたい。一時は慰安婦問題で、維新に対して「来るな、触るな、近寄るな」だった安倍さんも、選挙後の憲法改正では維新は役に立つかもしれない。そんな思惑が一致したのが今回の八尾移設ではないのか。
選挙や政争のためには、オスプレイもスタンドプレイに使う。政治家が哀れに、政治が哀しく見えてくる。
(日刊スポーツ「フラッシュアップ」2013年6月11日掲載)
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