政治家の言い分脱法ハーブの売人並みか
— 税の優遇受ける「迂回寄付」 —
「うちだけじゃないだろ。お前のところだってやってるじゃないか」「なにをぬかす。こんなセコイこと始めたのは、お前のところが最初だろ」。子どもでも、もう少しましなけんかをするんじゃないかと思うようなののしり合い。政治家が自分の選挙区に政党支部を立ち上げ、その支部を介して自らの後援会に活動資金を寄付。税の優遇処置を受けていた「迂回寄付」が発覚した。
国会議員に地方議員、市長や市長候補。維新、自民、民主。ことカネに関しては与党も野党もないところがスゴイ。言うまでもなく、政治活動に個人が寄付した場合の税の優遇措置は、大企業や労働組合といった組織からの寄付に政治家が頼ると、どうしたってその団体に有利な政治活動をしかねない。そこで、アメリカのティーパーティーや1ドル寄付運動のように個人個人が浄財を持ち寄って政治家を応援、みんなの意志を反映させた政治活動をしてもらう。この優遇措置はそんな思いで設けられたものだ。
寄付した個人は、確定申告で所得税から一定の金額が控除される。だが、この措置にいち早く目をつけたのが、市井の個人というより、政治家だったのだ。自分の後援会に資金を提供する際、個人としていったん政党支部に寄付、資金を迂回させ、一部を確定申告で還付させていたのだ。なかには、6年間で3700万円をいったん政党支部に入れ、全額後援会にまわしていたという豪の者の市会議員もいたという。
いわば財布を二つ持って、一つの財布からもう一つの財布に金を移す際、政党支部を通すと所得税がガッポリ戻ってくる。確かに法にふれることはないが、こんなイカサマ手品師のようなことを政治家がこぞってやっていたのだ。だが、この事態が発覚したあとも政党や政治家の動きは鈍い、というよりあきれ返る。「うちだけじゃない。あっちの政党だってやっている」「あの議員が迂回をやっていたのは、うちの党に来る前のことだ」。そんな泥仕合の揚げ句に「こんな抜け穴だらけのザル法を作ったのがいけない。早急に法改正すべきだ」。
そもそも税金をつぎ込んだ政党助成金も今回の優遇税制も、政治とカネの汚い関係を断ち切るためにできたはずだ。だが政治家に、制度が出来るたびに抜け穴を探されたのではたまったもんじゃない。
なのに、今回の件で自ら辞職したり、党から辞職勧告された議員は一人もいない。その言い分は「違法、脱法行為があったわけではない」。あなた方の発想は薬物ハーブの売人並みか。幻覚だろうか、頭がクラクラしてきた。
(日刊スポーツ「フラッシュアップ」2013年4月16日掲載)
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