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ビジネスマン フラッシュアップ


性懲りもなく人からコンクリートへ
— 「私のしごと館」タダで引き取り —

 人々が怒りを通り越して憤り、そのうちあきらめて、やがてほとぼりが冷めてしまう。それを待っていたようにこっそり動き出すことがある。先週、久しぶりに朝日放送の「キャスト」(月〜金午後4時50分)で「私のしごと館」の名を聞いた。なんと、この巨大豪華施設をタダで京都府に引き取ってもらうという。
日刊スポーツの実際の記事画像
 「私のしごと館」はプレオープンのときから、テレビ番組の取材でこれまで何度も足を運んだ。若者に仕事への興味を持ってもらおうと、消防士や美容師、声優、お菓子作りからマスコミ関係など、様々な職業の紹介と、その場で実体験もできることをうたい文句に03年、京都の学研都市にオープンした。造ったのは役人の天下りの巣窟、厚労省管轄の雇用・能力開発機構(当時)。581億円の巨額な総工費は全部われわれの雇用保険の掛け金。労災保険480億円をぶち込んだあげくに、たった8億円で民間に売却された「スパウザ小田原」と並んで「東のスパウザ、西のしごと館」と言われた無駄使いの権化のような施設だった。

 まあ、その豪勢なこと。敷地は東京ドーム2個分の8万3000平方メートル。テレビキャスター体験コーナーのスタジオで私が「ボクが出ている番組のスタジオよりはるかに立派」とレポートして、テレビ局の幹部を苦笑いさせたというエピソードがあるくらいだ。

 だけど、入場者数は役人が駄ボラを吹いた数には遠く及ばず、「しごとがないのが、しごと館のスタッフ」なんて陰口まで叩かれて、3年前に閉館。売却先を探したものの、こんな巨大施設に買い手がつくはずもなく、このたびなんとかタダで京都府に引き取ってもらうことにしたという。

 京都府は今後、iPS細胞の研究拠点や文化財の修復施設として利用するとしているが、それにしても、働く人たちが職を失ったときや職場で怪我をしたときに備えて掛けていた貴重なお金を1000億円もドブに捨てたこれらのハコもの。それを造った役人も後押しした政治家も、誰一人として責任を取らないのはどういうことだ。諸外国だったら、資産を没収されて刑務所に送り込まれているはずだ。

 なのに安倍政権は、またぞろ性懲りもなく人からコンクリートへ。国土強靱化計画の名のもと、今後10年間に200兆円の巨費を注ぎ込んでハコモノや高速道路、トンネル、港を造り続けるという。

 ならば、このやっかいもののしごと館の壁に<これぞ役人と政治家の『しごと感』>と書いたプレートを埋め込んで、末永く市民に見てもらう。せめて、そのくらいのウサは晴らさせてほしいのだ。

(日刊スポーツ・西日本エリア版「フラッシュアップ」2013年2月19日掲載)



私のしごと館(Wikipedia)
 http://ja.wikipedia.org/wiki/私のしごと館
ヒルトン小田原リゾート&スパ(Wikipedia)
 http://ja.wikipedia.org/wiki/ヒルトン小田原リゾート&スパ
日々刻々と価値が失われる 旧「私のしごと館」(京都府ホームページ)
 http://www2.pref.kyoto.lg.jp/cgi-bin/watashi-s/index.cgi



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