哀しい…スポーツが文化から脱落していく
— 日本柔道 相次ぐ不祥事 —
全日本柔道連盟(全柔連)も日本オリンピック委員会(JOC)も、どうしても2020年東京五輪を開かせたくないのか。まさかとは思うけど、そう疑いたくもなる。
柔道全日本女子の園田隆二監督(39)が、五輪代表の選手に暴力をふるっていた事件で監督を辞任した。だが、事件が発覚した段階で全柔連は「本人が二度としないと言っている」と監督の続投を表明。女子選手から直訴を受けていたJOCも「全柔連の判断に任す」とした。
この事件を報じたニュース番組で、私はかなり語気を荒らげて「どうせすぐ辞めさせることになるのに、この二者は一体、何を考えているんだ」とコメントした。その通り、監督は翌日、辞任した。
はっきり言って、私はこの二つの組織の幹部のオツムを疑いましたね。でも、自分たちのオツムの中身をさらけ出すのは勝手だが、ことはそれではすまない。
私は、こうしたコラムでもテレビのコメントでも「2020年の五輪はぜひ東京に」と言い続けている。日本国民の半数以上が自国で開催された五輪を知らない。それに、この国が内向き内向きになる中、7年後、震災と原発事故から見事に立ち直った日本を世界の人に見てもらいたいという思いもある。幸いにして、東京招致の泣きどころだった都民の開催支持率は、ロンドン五輪を上回る70%を超えた。
そんなときに今回の件は、招致に水を差したどころの騒ぎではない。自分から畳の外に転がり出たようなものだ。そこへもってきて、五輪メダリスト内柴正人被告(34)に教え子強姦事件で5年の実刑判決。東京五輪に関しては一本負けを取られても仕方がない状況になってしまった。
言うまでもなく、国際オリンピック委員会(IOC)は五輪の憲法ともいえるオリンピック憲章に基づいて運営されている。そこには暴力の排除と平和主義、それに性差別を含むあらゆる差別を許さないと明記されている。だから、女性のアスリートが参加できない、参加させないスポーツは絶対に五輪種目には取り入れられないのだ。
この憲章に則れば、女性を殴る蹴る、「ブタ」と罵る。指導者が未成年の女性を泥酔させて性行為をして、なお合意だと言い張る。そんな競技団体が存在する国に、逆立ちしたって五輪を開催させるわけがないじゃないか。
東京五輪がどんどん遠のいて行くからだけではない。私が大好きなスポーツそのものが、所詮この程度のものさ、と国民共有の文化から抜け落ちて行くことに、怒りを通り越して哀しみさえ感じるのだ。
(日刊スポーツ・西日本エリア版「フラッシュアップ」2013年2月5日掲載)
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