真紀子大臣にこそ「理」がある
— 新設大学 許認可騒動 —
横紙破り、暴走大臣、ジャジャ馬……。さんざんな言われようだった田中真紀子文科大臣。結果、岡崎女子大学(愛知県)など、いったんは大臣に不認可とされた3大学は、一週間もたたないうちに一転、新設認可。「官僚の壁は厚かった」と、真紀子さんは事実上の敗北宣言となった。
入学を希望していた高校生がかわいそう。大学設置・学校法人審議会が「認可」を答申していた。各大学は新設に向けて何年も準備していた──などが不認可取り消しの理由のようだが、どう考えても、この論議、根っこからおかしいと思いませんか。
真紀子さんが「これ以上、大学教育の質を落とすわけにはいかない」と、審議会が「認可」と大臣に答申した大学を「不認可」とした問題。私は、この件について最初にコメントを求められたときから「真紀子さんに理あり」と言ってきた。あれこれ言う前に、まず、認可の答申も出ていないのに、何年も前から7億円以上かけて校舎を新設した。教職員30人の採用を決めた。入学志望者が200人以上もいる──などとする新設大学側の言い分の方が、はるかにおかしいではないか。だったら審議会の審議は一体、何なんだ。
たとえは適当かどうかはわからないが、まだウンとも言っていないのに「家財道具がそろったんだから、嫁に来い」と言っているようなものではないか。そもそも、この審議会という制度が曲者なのだ。役所にとって都合のいい顔ぶれをそろえて、都合のいい答申を出させる。その結果、どうなったか。原発立地も、ダム建設も、きれいな海の干拓も、結末はあらためて言うまでない。
大学新設については、少子化の中、この20年でその数は1.5倍の783校に膨れ上がり、だれでも入れるどころか、定員割れが続出。世界最低の大学教育とまで揶揄されている。なのに、なぜ、まだ増殖させるのか。
今回の件で、一番あわてて真紀子さんを必死で説得したのは、じつは文科省の役人。783校にもなった大学に副理事長、理事、事務長、そんな肩書で、彼らはどれほど天下りしていることか。定員割れを起こそうが、世界最低になろうが、文科省はそんな大学にも私学助成金をたんまりとつけて、ぐるりと回って将来、自分たちの懐に入ってくる仕組みにしているのだ。だからこそ、目の色変えて真紀子さんをねじ伏せたのだ。
この件に関して、「真紀子さんに理あり」とする私の理はここにある。今回はあえなく敗退したが、これに懲りずにジャジャ馬のタテガミで、こんな仕組みの横紙を大いに破ってほしいと願っている。
(日刊スポーツ・西日本エリア版「フラッシュアップ」2012年11月13日掲載)
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