役人にとって人の不幸はカモの味
— 東日本大震災復興予算の使われ方 —
狭い仮設住宅のコタツで、家々は土台だけになった海岸で、お目にかかった被災地のみなさんの悔し涙と、うめき声が聞こえてくるようだ。東日本大震災の復興予算の使われ方である。
刑務所の訓練用機械の整備費。これは受刑者が出所後、被災地で働くかもしれないから。岐阜県のコンタクトレンズ会社の設備費。この会社は原料を東北から仕入れているから。南氷洋の捕鯨妨害対策費。宮城県石巻市に鯨の缶詰工場があるので、妨害行為を止めるとこの工場が助かるから。挙げていったらキリがないが、吐き気を催してきたので、このへんでやめる。
まさに役人にとって震災という人の不幸は、おいしいおいしいカモの味。復興に当てるべき予算を横取り、横流しして涎を流しながら、ニターとしている顔が目に浮かぶではないか。復興予算は総額十九兆円。国民の所得税と住民税を一律増税して捻出したこの予算のじつに4分の1は、こんな風が吹けば桶屋が儲かるの例えさながらの、わけのわからない事業に使われている。
さすがに国会も放置しているわけにいかないと、自民党など野党が衆院決算行政監視委員会の小委員会でこの問題を追及することにしたところ、役人に任せっ放しにしてきたことがバレてしまう民主党は「これはまずい」と委員を出席させず、小委員会を流会にさせてしまった。
被災地の方々の顔を思い浮かべながら、この問題に怒りの収まらない私は先週の火曜日、出演しているTBSの「ひるおび!」(月〜金午前11時〜)で、ゲストの自民党衆院議員の河野太郎さんとともに、役人のやりたい放題を厳しく批判させてもらった。
津波で機械を全部流されてしまった宮城の工場主は、国に資金援助を申請。だが、グループを組まない限り、個人ではダメ。やっと仲間の企業を見つけると、焼け太りになるので以前と同価値の中古の機械に限る。探し回ってやっと中古品を手に入れる目途が立つと、「何を言っているんだ。購入したあと、領収書を持ってきて初めて金は出るんだ」。工場主は「そんな金があるなら頼みはしない」と取材の途中で泣き崩れたいう。
あまりのことに声を荒ららげる私に、番組のCM中、河野さんがそっと囁いてくれた。「気をつけて下さいね。この問題を追及すると、追い詰められた財務省は国税(庁)の役人を使って『お宅に税務調査の査察を入れるぞ』って嫌がらせをしてきますから」
ノーベル賞を受賞する素晴らしい研究者がいる一方で、この国の土台を政治家と役人がボロボロにしている。
(日刊スポーツ・西日本エリア版「フラッシュアップ」2012年10月16日掲載)
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