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スタジオ フラッシュアップ


強い者が弱い者を助ける使命
— 大津いじめ事件 お父さんの手記 —

 木曜日にコメンテーターをさせていただいている朝日放送の「キャスト」(月〜金午後4時53分から)の打ち合わせ中に、A4用紙4枚のコピーを手渡された。大津市のいじめ事件で昨年10月11日に飛び下り自殺した中学生のお父さんが「息子の一周忌を迎えるに当たり」と題して書かれた手記だった。
日刊スポーツの実際の記事画像
 猛暑のこの夏、私たちは何度、いじめ事件を報道してきたことか。私自身もあちこちで書いたり、コメントしてきた。このフラッシュアップでも「先生は掛け値なしに素晴らしい仕事」として、何よりも学校現場で先生方にがんばってほしいと記した。

 お父さんの手記は、息子さんの死が未だ真相解明に至らず、「何をどうすればこの問題は解決の方向に向かうのか、頭を抱えます」としているが、読み進んでいくと、このお父さんの言葉の中にこそ解決の糸口があるように、私は思えてならなかったのだ。手記には「この一年を通じて感じたことは、一つの命を尊ぶ気持ちが学校・教育現場では非常に希薄だということです。まず、どのような現状が学校現場に存在しているのか。これをしっかり出し切ることが問題解決の近道だと考えます」と綴られている。

 そして先生方に「・力の弱い人を力の強い人が助けなければならないということを教えて下さい。・能力の高い人に能力の低い人の足らない部分を補う使命があることを教えて下さい」としたうえで、「それが出来る一番身近な正義の味方、アンパンマンは先生たちです!」としている。

 翻って、私たちは基地も、危ない輸送機も原発も、力の弱い地方に押しつけて、自分たちは安穏と暮らしてはいないだろうか。売れっ子芸人の母親が生活保護を受けていると、東大を出て大蔵省(財務省)に入省、その後、国会議員にまでなった女性が鬼の首を取ったように騒ぎ立て、あたかも受給者の多くが不正をしているかのように世間を煽った。当の女性議員は「制度の問題点を指摘した私は大手柄」と吹いてまわる。

 先生に限らず、私たち大人は、そうやって逃げ場のない人を追い詰めて行く行為が、人として決してやってはならないこと。人間として、一番恥ずかしく卑しい行動なのだということを子どもたちにしっかり教えているだろうか。

 「息子の死はいまも只々宙を彷徨っているように思えてなりません」として、「私たちだけの問題とせず、全国の方で知恵を出し合ってほしい」と書くお父さん。私自身、先生たちには及びもつかないが、せめてアンパンマンのハシクレでいたいと思っている。

(日刊スポーツ・西日本エリア版「フラッシュアップ」2012年10月9日掲載)



滋賀・大津市の中2自殺問題(Yahoo!ニュース)
 http://dailynews.yahoo.co.jp/fc/local/otsu_suicide/
芸能人生活保護不正受給問題(Wikipedia)
 http://ja.wikipedia.org/wiki/芸能人生活保護不正受給問題
アンパンマン(Wikipedia)
 http://ja.wikipedia.org/wiki/アンパンマン



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