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大混乱だった解散総選挙
〜 その余波は維新の内紛と都構想頓挫の可能性へと発展

吉富 有治
国会議事堂

 突然の衆院解散で有権者も慌てたが、政界も大混乱となったのが今回の総選挙だった。


 小池百合子都知事が希望の党を作って民進党を引っかき回したかと思えば、枝野幸男元官房長官が男気を出して立憲民主党を立ち上げ、多くの有権者の支持を得て、いきなり野党第一党の座を獲得した。与党は現状を維持したが、希望の党は失速し、民進党は見る影もなくなって野党は大打撃を受けた。だが、小さいながらも立憲民主党が大きく飛躍したことは、今後、健全な野党が生まれる下地を作ったのではないか。

 大混乱と言えば、大阪も混乱している。大阪の地域政党・大阪維新の会と、そこから出発した日本維新の会がお家騒動で大揺れになっている。

 ことの発端は維新の敗退だ。公示前の14議席から3議席を減らし党勢を失った日本維新の会から、松井一郎代表(大阪府知事)の責任を問う声が上がった。9月24日に投開票がおこなわれた堺市長選挙にも維新は破れ、今回の総選挙でも大阪以外の小選挙区で勝ち抜いた候補者はゼロ。選挙を指揮した松井代表の辞任を求める声が党の中から上がり、敗戦で意気消沈した議員らに追い打ちをかける異様な事態になっている。

しかも、選挙戦敗退の責任と総括を求めた丸山穂高衆院議員(大阪19区)に、橋下徹元代表(前大阪市長)が「このボケが」とブチ切れる場外乱闘まで勃発。怒りの収まらない橋下前代表は日本維新の会の法律顧問を辞めると宣言したから、事態はますます泥沼の様相になってきた。

 この問題、おそらく橋下前代表と丸山衆院議員だけのケンカでは収まらないだろう。なぜなら、維新の内部では吉村洋文政調会長(大阪市長)をはじめとして松井代表を支持する者がいる一方で、同代表の責任を問う声は他にも複数いるからだ。このまま維新の反松井派が矛を収めなければ、おそらく日本維新の会は分裂する。仮に反松井派が一時的に矛を収めてもシコリは残る。いずれ再爆発するはずだ。

 希望の党もそうだが、維新という政党は民主的な組織のように見えて、その実態はワンマン社長が経営する零細企業と変わらない。上が「右向け」と言えば、下は全員が右を向くような非民主的な組織である。こんなこと、特に大阪維新の会の議員あたりが一番よく理解しているはずだ。

 自民党が老舗の大企業なら、公明党や共産党は少し歴史のある中小企業。一方、希望や維新は小さな町工場である。零細でもトップが癖のあるワンマンなので、似たような零細企業と業務提携や合併しても互いに個性が強すぎてうまくいくはずがない。石原慎太郎元都知事が率いる太陽の党や江田憲司衆院議員らの結いの党と一緒になっても1年足らずで破談になったのは、このためなのだ。

 丸山衆院議員は東大を出て経産省の官僚になった優秀な政治家である。だか、まだまだ維新の実態を理解していない。そこそこ儲けて大きくなった零細企業のワンマン社長が、「ここで我が社も新卒を募集しようと思う」とトップダウンの一言で新卒を募集。いわば、採用第一号が丸山衆院議員である。ところが本人はなまじ才能があるものだから、新入社員なのに『(株)維新の経営改善計画』なんてものを出したところ、経営陣らから「生意気だ」と怒りを買った。いまの維新のお家騒動はワンマン社長が支配する零細企業の内紛と同じで、少人数で組織の風通しが悪い分、長く尾を引くのは間違いない。


 維新の逆風はこれだけではない。維新が総選挙で敗退して勢力を落としたことで、大阪維新の会が目指す大阪都構想の実現にも黄信号が灯ってきたのだ。

 大阪都構想を実現するためには大阪府と大阪市の両議会で住民投票条例案を可決させねばならず、その前段階として、都構想の制度設計を担う法定協議会で「協定書案」(いわゆる都構想の設計図)を各会派に認めさせないといけない。ただし、住民投票条例案にしても協定書案にしても維新単独での可決は不可能。どうしても公明党の協力が必要なのだ。

 2015年5月の住民投票実施に向けた裏工作で、維新は公明党の協力を仰ぐため、同党が出馬する大阪の選挙区に維新候補は立てなかった。公明党はその引き換えとして、府市の両議会で住民投票条例案を可決させた経緯がある。ところが、公明党は選挙前から維新と距離を置き始めた。公明党の佐藤茂樹衆院議員(大阪3区、大阪本部代表)は選挙演説の中で都構想を厳しく批判。「公明党の大阪府議、大阪市議も同じ思いだ」と支持者の前で宣言した。

 一方、これまで維新に肩入れしていた安倍晋三政権にも変化が現れた。選挙中、自民党と維新がガチンコ対決していた大阪の選挙区に、安倍首相は自民党候補者の応援演説に来ているのだ。過去の選挙戦では維新に気兼ねして大阪での演説を控えてきた安倍首相だが、ここに来て安倍政権も公明党と同じく、維新と距離を置き始めている。自民党のある国会議員は「維新に肩入れするのは危ないと、周囲から忠告されているようだ」とまで語っているから、都構想に黄信号が点滅しているのは間違いないだろう。


 野党の大混乱で終わった総選挙。その余波は大阪にも及び、どうやら都構想が風前の灯となるオマケまでついたようである。

(2017年10月26日)


希望の党
 https://kibounotou.jp/
立憲民主党 | 特設サイト
 https://cdp-japan.jp/
大阪都構想 二重行政のムダをなくす。豊かな大阪をつくる。(大阪維新の会)
 http://oneosaka.jp/tokoso/


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