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24区長から総スカンに遭った都構想の「区割り案」
〜 その後の区長会では一転して賛成へ(下)

吉富 有治
大阪

 前回のコラムでは大阪都構想の亡霊が蘇り、大阪市の24行政区を4区か6区の特別区に再編する2つの区割り案に対して、7月14日に開かれた市の区長会で反対意見が続出したことを指摘。会議の概要をまとめた非公開記録を明らかにした。


 この記録の中身を簡単に説明しておくと、①歳入が豊かな区と貧弱な区の格差が大きすぎ、スタートからハンディを背負った特別区も現れる(東成区、福島区、生野区、大正区などからの意見)。②大阪市を4つの特別区に分けた場合、1つの特別区の人口が大きすぎ、「住民に近い基礎自治体」という都構想の精神が失われる(東住吉区からの意見)。③淀川をはさんで分断される特別区が誕生すると、交通の利便性や災害時の体制など、自治体として機能するのか疑問(東住吉区、此花区、大正区などからの意見)といった批判が出され、市に対して再考を求めた。各区長からの思わぬ"反撃"に、吉村洋文大阪市長も面食らったと聞いている。

 その2週間後の7月28日に区長会が再び開かれ、この区割り案が再度、議論のまな板に乗った。だが、7月14日の区長会では反対意見が続出したのに、28日では一転してトーンダウン。24区の区長は24人中23人の賛成によってこの区割り案を了承した。ただし、区長たちも賛成だけではカッコが悪いと考えたのか、賛成するにしても一応の附帯決議が付けられた。それが以下である。


特別区の区割り案についての区長会議見解

 平成29年7月14日に副首都推進局より示された特別区区割り案(4区案・6区案)については、いずれも付与条件を考慮されているものと評価しますが、
  1.  区割り案については、4区案、6区案とも、A区及びB区が淀川(一級河川)をまたぐものとなっており、防災上の観点、一体的な行政運営の観点、新たな地域コミュニティ形成の観点、これらの課題対応のための行政コスト増の観点から強い懸念があり、また、6区案ではE区が長細い形状となっており、一体的な行政運営の観点、新たな地域コミュニティ形成の観点から懸念があり、再検討の余地もあると考えます。
  2.  今後の行政素案作成にあたっては、次の点について特段の配慮が必要と考えます。
    • 各特別区が独立した自治体として運営されていくためには財政均衡が重要であり、財政調整制度をつくるにあたっては構造的な赤字や財政不均衡が発生しないようにすること
    • 津波など大規模災害の際の長期湛水等に備え、特別区間で連携して防災対策ができる仕組みを構築すること
    • 新たな特別区において、地域コミュニティの早期形成が図られるようにすること


 要するに、「区割りについては再検討の余地もあるのではないか」、また「再検討するに際して財政均衡や災害対策、また地域コミュティの観点から熟慮してほしい」と言っているのだが、いずれにしても区割り案が了承されたことは間違いない。

 なぜ、このような腰砕けの附帯決議しか付けられなかったのか。区長たちはお粗末な区割り案に反対できなかったのだろうか。このあたりの事情について大阪市の関係者が話してくれた。

「区長たちは強く反対できないのです。一応、都構想の制度設計を担当する副首都推進局からは意見を求められましたが、任命権者の吉村市長に逆らえるわけもなく、また議会と違って拒否権もないので、半ばあきらめムード。附帯決議を付けたのは区長たちの虚しい抵抗です」。

 吉村市長にすれば、欠陥だらけの区割り案を法定協議会に出すわけにもいかず、条件付きでも現場に精通した24区の区長の"お墨付き"さえ得れば、都構想に反対する会派も押さえ込めるという計算が働いたのかもしれない。ただし、7月14日の区長会で思わぬ反対に遭ったのは計算外だったようで、その後、無言のプレッシャーを区長たちに働きかけて区割り案を了承させたというのが大阪市幹部らの見方である。

 実は、この区割り案に反対していたのは区長たちだけではなかった。都構想推進派である大阪維新の会の市議の多くも反対していたのだ。

 法定協議会のメンバーでもある維新の会の守島正市議は自身のツイッターで、「行政側が出した六区原案。これ、人口バランスや、財政調整 歴史経過とかちゃんと考えてるとは思えない程イビツに見える。この区割りで人口や財政シミュレーションが厳しい→だから4区というロジックだけには宣戦布告しておく。」(7月13日、原文ママ)と憤りを隠さなかった。その後、維新市議団の会合でも反対意見が続出したという。

 ところが現在は維新の市議らから不満の声は聞こえてこない。かといって賛成の意見も出ず、沈黙したままだ。

「どうやら上からの命令で箝口令が敷かれていて、『黙っていろ』とプレッシャーをかけらたようです」と語るのは市議会関係者だ。維新の市議たちも区長と同様、行政の圧力に屈したのだとしたら議会の役割を放棄したことになる。


 大阪市民の知らないところで大阪市の解体が議論され、再び莫大な税金まで使われようとしている。それでも正確な情報が市民に公表されていればいいが、肝心な問題は隠されて出てこない。区長だけではなく維新の議員ですら本音では反対なのに、その声は伝わってこない。それでも大阪都構想に賛成するのか。

 大阪市民は、いま一度、じっくり考えてもらいたい。

(2017年8月3日)


大阪都構想(Wikipedia)
 https://ja.wikipedia.org/wiki/大阪都構想
ハッシュタグ #大阪都構想(Twitter)
 https://twitter.com/hashtag/大阪都構想?lang=ja
大阪都構想 二重行政のムダをなくす。豊かな大阪をつくる。(大阪維新の会)
 http://oneosaka.jp/tokoso/


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