JavaScriptが使えません。 BACK(戻る)ボタンが使えない以外は特に支障ありません。 他のボタンやブラウザの「戻る」機能をお使い下さい。
本文へジャンプ サイトマップ 検索 ホームへ移動
ホーム 更新情報 フラッシュアップ スクラップブック 黒田清JCJ新人賞 活動 事務所

Webコラムのコーナートップへ
24区長から総スカンに遭った都構想の「区割り案」
〜 その内容を公開(上)

吉富 有治
大阪

 2015年5月17日の住民投票では反対が賛成を上回り、この時点で「大阪都構想」は終わったはずだった。だが、なぜか都構想の"亡霊"は成仏できないまま、いまも大阪をさまよっている。


 大阪市と大阪府は今年5月と6月、都構想の設計図作りの場である法定協議会の設置を維新の会と公明党の賛成多数で相次いで可決した。早ければ、来年秋には再度の住民投票が行われる予定だ。ここで賛成多数になれば大阪市はマグロのように解体され、代わりに東京都のような特別区が旧大阪市内に置かれることになる。

 特別区を作るには「区割り」が必要だ。区割りとは、24ある大阪市の行政区をジクソーパズルのように壊しては組み合わせ、最終的に4つか6つの特別区に再編することである。

 さて、大阪市は7月17日に市内24区の区長を集めた区長会を開き、そこで都構想のたたき台となる「区割り案」を初めて示した。ところが、7月21日付けの毎日新聞が報じたところでは、この区割り案、現場にいる各区の区長からは相次いで批判が飛び出し、総じて反対意見が多かったという。

 どのような批判だったのか。この日の区長会は非公開だったためマスコミには報じられていないが、私は各区長の意見をまとめた一覧を入手したので以下、公開する(写真、注・原文の表から文字だけを抜き出したが、「B/S」などは「貸借対照表」に、句読点なども読みやすいよう表現を一部書き改めている)。

各区長の意見

 明らかになった批判は概ね次のとおり。各特別区によって大きな財政格差があること、1つの特別区の人口が多すぎ、都構想のウリである住民自治が実現しないこと、あるいは湾岸部の特別区では南海トラフ大地震など防災対応に不安が残ること―などが上げられ、このままでは住民に説明できないといった意見も出されたようだ。

 さらに興味深いのは、橋下徹前大阪市長の時代に誕生した公募区長も今回の「区割り案」には文句をつけていることだ。維新寄りであるはずの公募区長からさえダメ出しされた「区割り案」。いかにデタラメで急ごしらえかがわかる。


 今後、この「区割り案」を元に法定協議会で都構想の議論が本格的に始まるが、どう考えても前回に否決された設計図と同じか、より劣化したものしかできないだろう。こんなジグソーパズルのお遊びに巨額の税が使われる大阪市民こそ、いい迷惑である。

(2017年8月1日)


■特別区の区割りの案に対する各区の意見(共通)■
【東成区】
  • 今回の区割り案は「財政基盤の安定と均衡」「財政の均衡化」を考慮したとの説明があったが、その具体的な中身は「住民一人当たり自主財源の比較」である。仮に「住民一人当たり自主財源」が大きくとも、財政全体を見て歳入よりも歳出(特に義務的支出)がそれを上回るような収支構造になっているとその自治体は厳しい財政運営を余儀なくされるため、「住民一人当たり自主財源」は財政均衡の指標としてあまり意味はない。ストック面で資産(インフラ)の維持管理コストや市債の残債の償還コストも、財政均衡にとって重要な視点であるが、あまり議論されていない印象がある。また、フローのコスト面でも、福祉や防災など非裁量的経費の比重が高くなる地域もあり、これらを総合的に勘案しないと、スタート時点で財政的に大きなハンディキャップを負うこととなる自治体もありうる。少なくとも、予定される開始貸借対照表, 行政コスト計算書,キャッシュフロー計算書を新特別区ごとに作成し(可能な範囲で将来分も予測)、法定協議会ではそれをもって財政の均衡化を議論していただくべきではないか。
【住吉区】
  • 両案とも、直近の分区の経過や地域住民間のつながりを踏まえ住之江区と同一区とされている点、財政状況均衡化の観点から中央区と同一区とされている点について、区割り案の基本的な考え方に即したものであると認識します。
【旭 区】
  • 区割り案作成にあたっての基本的な考え方には異議はありませんが、淀川を挟んで一区をつくる(4区案、6区案ともにA区及びB区)という部分については、区の一体性や防災面等で課題が大きいと考えます。
【福島区】
  • 一人当たりの自主財源の最大格差が4区案では1.14倍、6区案では1.2倍とほぼ均等となっているが、人口規模の最大格差が4区案で1.73倍、6区案で2.08倍となっていることから、結果的に各特別区の自主財源の総額は大きく異なることとなる。自主財源の総額が小さい特別区は、区独自事業を進めるには範囲が限定されることから、人口規模の少ない特別区に属する区民の理解を得られないのではと思われる。
【福島区】
  • 福島区の前回の住民投票結果を考えると福島区民は、概ね前回の区割り案には理解を示していたが、今回の4区案、6区案については前回の区割り案と大きく変わっており区民の理解を得にくいのではと思われる。
【生野区】
  • 自主財源が均等になるように区割りをしたとあるが、4区案、6区案ともに85千円〜103千円であり、実際に各特別区がサービス水準を下げずに事業を行なっていくためには財政調整制度が重要であることから、「自主財源に配慮して」という説明は、財政調整制度と合わせて行う方がいいのではないか。
【大正区】
 4区・6区案策定への背景、理由
  • 前回住民投票へ向けて策定した行政4案(市長裁定前)は行政としてのベスト4案であったと今でも考えています。中核市並みの規模を現時点での人口で見るか将来推計人口で見るかという軸、そして、北区と中央区とをひとつにするか分けるかという軸といった行政案策定に当たっての軸が明確、かつ、妥当であったからです。
  • 住民投票前後の様々なご意見を踏まえそれを修正する形で新たな5区(または、5区・7区)案をつくり直すというのがごく合理的な考えかたと思われます。
  • 今回、「なぜ、(5区・7区案ではなく、)4区・6区案なのか理解しがたいところがあります。5区・7区案より4区・6区案のほうが、様々な意見を踏まえ妥当との判断に至った背景、理由が明確に示されているようには思われません。
  • 大前提としてその点は明確に示されるべきです。また、それによっては4区・6区案のありかたも変わってきますし「区長会議総体としての見解」も変わってきます。
 防災上の視点
  • 「特別区の区割り案作成にあたって」の「具体的な考え方(視点)」に「災害対策について、防災上の視点について出来る限り考慮する」とあります。
  • 「出来る限り考慮」≒「湾岸エリア区の統合をできるだけ避ける」との理解になっていないか懸念があります。親和性の高い湾岸エリア区のみを統合しても、防災対策(例:内陸特別区との協力)が考慮されていればよしとの考えかたで再検討できないでしょうか?
  • 原案の発想では、全国的には幾つも存在する沿岸沿いに横広になっている地方公共団体はすべて、「防災上の視点」上、同団体の存在すら危ういということになってしまわないでしょうか?
 自主財源
  • 区割り案作成にあたり、人口規模については、「可能な限り均等化」を目標に、現時点ならびに将来推計を明示しています。
  • 自主財源についてもその必要性はないでしょうか?現時点の値だけでなく、人口の自然・社会増減、あるいは、まちづくりの成功シナリオ(3パターン程度)に基づく税収増減を加味した将来推計値が必要ではないでしょうか?
【此花区】
  • 4区案のB区、6区案のD区について、津波によって区域の全域が水没したまま長期湛水する区は、危機管理の面からみて自治体としての体をなさず、住民の理解が得られない。
  • 4区案のB区、6区案のD区について、区域内のUSJや大規模工場等にかかる税収の再配分をしっかり構築しないと、区民の理解を得られない。
【東淀川区】
 過去の合区・分区の歴史的な経緯
  • 東淀川区は大正14年の第2次市域拡張以降淀川区とは一体の区であり、昭和49年7月に分区した経過がある。「過去の合区・分区の歴史的な経緯を踏まえる」ならば当然に両区は同じ区にまとめるべきである。
 災害対策上の視点
  • 東淀川区は淀川右岸、北区・都島区・旭区は淀川左岸にある。両者は長柄橋・菅原城北大橋・豊里大橋の3橋で結ばれているが、大災害が発生し橋梁に被害が出た場合や川の氾濫で通行ができなくなった場合には、交通が寸断される可能性が高い。物資の搬送など一体的な対応が困難であり、迅速な対応が行えないことが考えられる。また、大震災の発生時のJR新大阪駅の帰宅困難者対策や、津波が発生した場合の西淀川区・淀川区からの避難住民対策を組織的に行うため、少なくとも淀川区との一体化が必要である(西淀川区との3区合同も考察すべきである)。

■特別区4区案に対する各区の意見■
【東住吉区】
 人口について
  • 1区の人口が多く、中核市なみの行政が可能となる組織体制の説明が必要(ニアイズベターの観点からの説明)
  • A区については、現行の政令指定市の人口基準70万人以上を上回るものであり、政令指定都市として位置付けることができる規模であるにもかかわらず特別区とする明確な理由が必要
 形態・配置について
  • 地域を俯瞰すると区域の形態に違和感は少なく、ある程度交通について網羅されているものとみることができる。ただし、既存の交通網で往来が困難な区域もあるため、本庁舎の設置場所については検討が必要(東住吉区中南部→生野区等)
  • A区、B区については、淀川により区域が分断されるため災害時等における体制の確保が課題
 財源について
  • 配布の資料の範囲では、区の自由裁量経費が不明であり差が生じた場合どのように補てんするか検討が必要。また、福祉や子育てに係る行政サービスへのニーズに偏りがある区に対する考慮が必要
【港 区】
  • 4つの区割により離れる現行の区の間で(例えば港区と大正区)、既に様々な連携事業も行われていると思うので、4特別区となってもその連携も継続活用できる工夫が必要と思います。
【大正区】
  • 1人あたり自主財源額では最大1.14倍(6区では1.20倍)ということではありますが、自主財源額合計では最大1.77倍(6区では1.92倍)にも及びます。
  • 1人あたり歳入額で見ると、最大1.47倍(6区では2.11倍)。歳入合計額で見ると、最大2.27倍(6区では3.47倍)に及びます。
  • 「財政状況の均衡化」を「1人あたり自主財源」と読み替えると確かに原案にも妥当性があるように見えますが、現時点・将来人口、ならびに、現時点・将来財政推計も加味した「財政状況の均衡化」議論が必要(議論したならそれを明らかにすることが必要)です。
【此花区】
  • B区について、淀川を挟んでいるので、一つの自治体として機能するか疑問がある。

■特別区6区案に対する各区の意見■
【東住吉区】
 人口・形態・配置について
  • D区、とF区では人口差が2倍となることとなり、これが原因となり行政サービスに差が生じることがないか説明が必要
  • 地域を俯瞰するとB区、E区の区域の形態が複雑となっており、特にE区の場合他区と比べ区域が広くなり、災害時の対応等に課題が生じる可能性がある
  • ある程度交通について網羅されているものとみることができる。ただし、既存の交通網で往来が困難な区域もあるため、本庁舎の設置場所については検討が必要(東住吉区中南部→生野区等)
  • A区、B区については、淀川により区域が分断されるため災害時等における体制の確保が課題
 財源について
  • 配布の資料の範囲では、区の自由裁量経費が不明であり差が生じた場合どのように補てんするか検討が必要。また、福祉や子育てに係る行政サービスへのニーズに偏りがある区に対する考慮が必要
【港 区】
  • 津波等大規模災害を対策を考慮し湾岸エリアの区だけの区割にならない形となっていますが、長期湛水等の対策も考えると災害時の特別区間連携ができる仕組みも必要と思います。
【住吉区】
  • 6区案は、形状が逆T字型で、特に南北に長細い形状となっているため、住民に同一区民としての意識を共有してもらうためには、工夫が必要な案であると認識します。
【福島区】
  • B区について、福島区のみ淀川より南に位置しているが、福島区民にとっては大きな淀川を越えて行き来することは少なく交通の利便性等を考慮すると、福島区民の理解を得にくいのではと思われる。
【大正区】
 財政格差
  • 4区案の意見とも関わりますが、より小さい単位の6区案のほうが自主財源(1人あたり、合計)も歳入額(1人あたり、合計)も4区案より格差が広がります。
  • 6区案(より小さい単位の別案)を検討する目的の検証が必要と考えます。
 形状
  • 都市の形状はとても重要と思います。6区案のB区、E区は形状的にあまりにも歪です。交通・商業現況以上にまちづくりの士気に関わる大問題と考えます。全国の地方公共団体を見渡して、同じような形状の団体があるなら示していただきたいところです。
  • 共通意見(防災上の視点)にも関わることですが、住之江区の扱いも含め、都市形状にも配慮した再検討が必要と考えます。

■質 問■
【福島区】
  • 今後、法定協議会での議論を経て、特別区設置協定書の提案、住民説明会と進められていくと考えられるが、区役所の役割は前回同様、住民説明会の運営補助程度に留まるのか。それとも、区民への説明等、前回以上の役割を担うことが予定されているのか。


大阪都構想(Wikipedia)
 https://ja.wikipedia.org/wiki/大阪都構想


戻る このページのトップへ