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泥沼化してきた森友学園問題
一方、論点のすり替えに必死な政府与党の断末魔

吉富 有治


教室の風景

 森友学園問題で安倍政権は、3月23日に開かれた衆参の両予算委員会によってケリをつけようと考えていたはずだ。ところが時限爆弾が爆発、証人の口から次から次へと出てくる政治家の名前やファックスなど新たな事実によって問題は収束するどころか、さらに複雑怪奇になってきた。


 政府与党は籠池泰典理事長を補助金詐欺か偽証罪で告発し、口封じによって幕引きを図りたいのかもしれない。だが各紙の世論調査でも、まだまだ真相解明にはほど遠いと感じている国民が大半である。なのに「臭いものにはフタ」という態度では、ますます国民の政治不信は強まるばかりだろう。

 一方、臭いものにはフタではないが、臭いものを隠すために安倍晋三政権によって論点のすり替えもおこなわれている。最近の例では民進党の辻元清美衆院議員の問題だろう。

 これは、内閣総理大臣夫人である安倍昭恵さんと籠池理事長の妻との間のメールが政府によって公開されたことがきっかけだった。そのメールには辻元議員が塚本幼稚園に侵入しただの、小学校の建設現場にスパイを送り込んだといった趣旨の記述が書かれていたものだから官邸は大喜び。3月28日の参院予算委員会で100万円の寄付疑惑を質した民進党の斎藤嘉隆議員の質問に対して、安倍首相は「『ない』ということの証明は『悪魔の証明』。では、辻元議員はどうなのか」とムキになっていた。あるいは政権に近い御用評論家らがテレビで“辻元疑惑”をひんぱんに取り上げ、論点のすり替えに躍起となっている。

 言うまでもなく森友学園問題の核心とは、国有地を常識はずれの値引き率で払い下げたことと、砂糖にハチミツをかけたような大甘な審査で大阪府が「瑞穂の国小学院」を「認可適当」とした、その経緯と理由にある。それなのに「資料は破棄した」「適法におこなわれた」などと財務省や閣僚が説明にならない説明を繰り返すから多くの国民は納得できないままなのだ。

 仮に“辻元疑惑”がこれらの核心部分と関係があると仮定しよう。だったら、籠池氏を証人喚問したように辻元議員と籠池氏の妻を証人喚問して真相を解明すればいい。と同時に、100万円の寄付問題についても昭恵夫人を証人喚問することだ。政府与党と野党があれこれ言い争いしていても泥沼にはまるだけ。証人喚問で真偽を確かめた方が結論は早く、公平公正という点でも国民が納得できる。

 それにしても、籠池氏の主張を「ウソだ」と繰り返していた政府与党が、籠池氏の妻のメールを信じて辻元議員を追及するというのも不思議な話である。それとも夫はウソつきだが妻は正直者とでも言いたいのだろうか。なんともダブルスタンダードな政府の態度ではないか。


 論点のすり替えはこれだけではない。たとえば、過去に新聞社が国有地の払い下げを安価で受けた事実を上げ、その事実との比較から森友学園の問題をケンカ両成敗のように扱う主張も見受けられる。あるいは、問題の小学校に隣接する国有地を豊中市が結果的に安く手に入れたことから、あの土地はもともと安かったのだという主張が政権べったりの野党から出され、それを信じる人は少なくない。

 だが、これらは「国有地の払い下げ」「破格の安値」という共通項があっても、まったく別次元の話である。同じ動物性タンパク質という理由で、「牛肉と鯛、どっちが美味いか」といっているようなもので意味がない。

 なるほど前者は、国有地の払い下げにより国が新聞社へ恩を売ることで国家による報道統制といった狙いが見え隠れする。ならばこれらは、払い下げによってジャーナリズムの精神は失われたのではないのか、報道の自由を忘れた新聞が国家犯罪をわざと見逃しているのではないかという森友学園問題とは別の文脈で語る必要がある。

 また、不動産評価額が約14億円もした国有地を豊中市が結果的に約2000万円で購入できたのも森友学園問題と同列に論じることはできない。こちらは住宅市街地総合整備事業補助と地域活性化公共投資臨時交付金の2つの既存の制度を豊中市が利用したからである。この補助金と交付金の合計が14億262万円。約14億2386万円の不動産評価額との差が約2000万円だったわけで、そこに忖度もへったくれもない。

 そもそも住宅市街地総合整備事業補助は以前からある国の制度で豊中市のために制定されたものではない。地域活性化公共投資臨時交付金もリーマンショック対策として当時の民主党政権が2009年に約1兆3790億円を予算措置したもので、こちらも全国で温暖化対策や地域の治安・環境対策などに利用されてきた。両制度ともわざわざ豊中市のためだけに作ったものではなく、ましてや問題の国有地が二束三文だった、だから約8億円の値引きも適法だったという根拠にもならない。

 ちなみに豊中市はこの国有地を買うため「約14億円をキャッシュで国に支払った」(同市市街地整備課)と私の取材に説明しており、不動産評価額の約9億円を支払わずに、まんまと国有地を手に入れた森友学園とはワケが違う。なお、2つの補助制度で豊中市は財政難と市民負担が減るメリットもあったが、森友学園のメリットは籠池理事長の財布が軽くなっただけでしかない。

 一方、森友学園が手に入れた国有地は異様な値引き率に至った経緯が怪しすぎるのだ。値引きの根拠になった約8億円の産廃除去費用があいまいなら、籠池理事長本人が8億円分の産廃を除去していないとメディアで語っている。「あっちも悪いが、こっちも悪い」というのはあからさまな論点のすり替えであり、この問題を矮小化しようとする意図があることを忘れてはいけない。


 もっとも、このような露骨な情報操作をするほど、それだけ安倍政権が森友学園問題を恐れている証拠でもあるのだろう。
(2017年3月29日)



森友学園(Google ニュース検索)
 https://www.google.co.jp/search?q=森友学園&newwindow=1&tbm=nws
「やっていない」を証明する難しさ…「悪魔の証明」とは何なのか - シェアしたくなる法律相談所
 https://lmedia.jp/2015/08/30/67047/
森友問題の本質は「100万円寄付金」の有無ではない | 上久保誠人のクリティカル・アナリティクス
 http://diamond.jp/articles/-/122683

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