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大阪都構想問題
欠陥品の協定書を住民投票にかける危険とは

吉富 有治
大阪・中之島

 「最後は住民投票で」「大阪都構想の是非は住民が決める―」。大阪市の橋下徹市長や大阪維新の会の議員がしきりに主張するこのフレーズ、確かに間違いではないが、ここには大切な前提が抜け落ちている。大阪都か、それとも現在の大阪のままか、あるいは別の選択肢を取るかを最後は住民が選ぶにしても、その前提として、是非を決める対象(この場合は大阪都構想の協定書)が完璧か、完璧に近いものでなくてはならない。


 例えばマンションに住むか、一戸建てを買うかの場合を考えてみればいい。このようなケースの選択では、マンションも戸建ても共に建築構造上の欠陥はなく、柱や床も傾いていない、大きな地震に襲われても倒れないといった前提がある。そもそも不動産を買う側は一般的に建築の素人だから、設計図を見て耐震構造に問題があるかなど見抜けるわけがない。通常、販売会社や施工会社を信頼して買うわけである。その上で、たとえば交通や買い物の利便性であるとか、周囲の環境はどうだとか、職場や学校に近いとか、あるいは部屋の改造をするときはどちらが手軽で安いかといった、いわば建築物の構造とは別の次元で比較するのが普通なのだ。

 一方、大阪都構想の是非を問う際の基準となるのは、7月23日の法定協議会で完成したと言われる協定書である(正確には協定書案。総務大臣の意見が付されて初めて完成となる)。ところがこの協定書は、信頼できる設計士やデザイナーらが念入りに設計したとは、とても言いがたいシロモノだった。大阪維新の会で占められた委員だけで中身を精査することもなく大急ぎで作ったものだからである。現在、協定書は総務省で審査がおこなわれているが、総務大臣から文句の1つが出ることさえ囁かれている。

 これは建築物に例えれば耐震偽装が仕込まれているようなものなのだ。でも一般の有権者は地方自治や地方財政の専門家ではないので、その欠陥を見ぬくことは、ほぼ不可能。そのため住民投票で是非を問う基準になっているのは、大阪都になれば二重行政が解消されるとか、税金の無駄遣いがなくなるとか、住民の意見をくまなく救い上げてくれる区長や区議が誕生するといった、いわば都構想の構造上の問題とは別次元のイメージ先行の話ばかりである。それも当然だろう。多くの大阪市民は、協定書は完璧だという思いがあるからだ。完璧でなくても、議会で修正すれば良いというくらいの意識だからである。


 繰り返しになるが、法定協議会で今回できた協定書は完璧なものではない。完成までの手続きにも法的な不備が指摘されているし、一番大切な財政上の問題も未解決であることはよく知られている。多くの問題を抱えたままの協定書を問題の解決抜きで住民投票に図ることは、とても危険であることを大阪府民、大阪市民には知ってもらいたい。マンションや戸建てなら欠陥があっても修理は可能でも、地方自治や行政は一度壊すと元の姿に戻すのは、まず不可能である。
(2014年7月25日)


大阪都構想(Wikipedia)
 http://ja.wikipedia.org/wiki/大阪都構想
構造計算書偽造問題(Wikipedia)
 http://ja.wikipedia.org/wiki/構造計算書偽造問題
大阪都構想(Yahoo!ニュース検索)
 http://news.search.yahoo.co.jp/search?p=大阪都構想

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