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あらためて大阪市長出直し選挙の意義を問う

吉富 有治
道頓堀

 首長選挙でも地方議員の選挙でも、あるいは国政選挙であっても、候補者が掲げる公約というものは実現可能なものでなければならない。実現できない公約を叫んで当選したころで意味のないことだからだ。極端な話、大阪市長選挙で候補者が「堺市の議員を入れ替える」と公約に掲げても無意味。「オバマ大統領に辞任してもらうために立候補した」と叫んだところで周囲からは蔑んだ目で見られることは確実だろう。

 当たり前のことだが選挙戦での公約とは、実現できること、あるいは実現できそうな内容に絞らねばいけない。公約を果たすには、候補者が首長なり議員に当選したときに自己の権限の及ぶ範囲でなければならない。


 今年3月23日投開票の大阪市長の出直し選挙で橋下徹市長が再選した。公約の1つに掲げていたものが「大阪都構想の制度設計をおこなう法定協議会(法定協)から都構想に反する委員を外す」というものだった。その"公約"の通り、6月27日に開かれた府議会議会運営員会(議運)で自民、民主の反対派委員2名が法定協から外された。大阪維新の会以外の会派は「暴挙だ」と猛反発するが、維新の会や橋下市長らは「公約にも掲げており、しかも約38万票のも民意を得たから反対派の排除は正しい、間違っていない」と訴えている。

 さて、ここで冒頭に述べた公約の原理について考えていただきたい。「反対派の委員を排除する」という出直し選での公約は果たして正当性があるのか、それは市長の権限なのかというものだ。結論から言うと、まったくない。法定協の規約を読めばその理由がよくわかる。

 府知事と市長は規約上は法定協の一委員にすぎない。会長を選任する権限はあるものの、それ以外は他の委員と同等だ。次に、他の計18人(府議会9人、市議会9人)の委員は府議会、市議会の推薦によって選ばれている。行政が選ぶのではないのだ。法定協は議会とは別組織ではあるが、ここでも二元代表制の原理が働き、議会の意思が入っても行政の意思は入らないのである。事実、法定協メンバーの入れ替えは議運で断行された。「議運は本会議をスムースにおこなうための事前調整の場。少数会派の意見は反映されず、きわめて強引な行為だ」といった批判はあるものの、原理的には議会の意思によって排除させられたわけである。

 選挙前に橋下市長は「出直し選挙をやらなくても委員は交代させることは可能だが、それでは独裁になるので」という理由を述べていた。これはつまり、市長もまた排除の論理は議会の意志であるという基本ルールは認めているのだ。わざわざ出直し選挙をしなくても委員の交代は可能だった、市長の権限外であることを言外に認めていたわけである。だとすれば、あの出直し選挙の公約は、「オバマ大統領に辞めてもらう」といった夢想的、誇大妄想的な公約と本質的には大差ない。


 市長の権限の範囲が及ばない以上、あの公約はまったく無意味なものだった。「独裁にならないように」と健気さを強調したところで、不合理な選挙を正当化する屁理屈にすぎない。そうであれば38万票を取ろうが100万票を獲得しようが、それら多数の民意も、残念ながら壮大なる空回りでしかなかったのである。

(2014年6月30日)

取材


公約(コトバンク)
 http://kotobank.jp/word/公約
出直し選挙(Wikipedia)
 http://ja.wikipedia.org/wiki/出直し選挙
大阪都構想(Yahoo!ニュース検索)
 http://news.search.yahoo.co.jp/search?p=大阪都構想

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