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大阪維新の会市議がネットで大フライング
〜 本質は「民意の否定」ではなく「民意を愚弄」

吉富 有治


大阪・中之島



 大阪市の橋下徹市長のお膝元、大阪維新の会市議団が揺れている。同市議団に所属する井戸正利市議(50)が3月28日、市民から寄せられた瓦礫処理問題の陳情書コピーの束をゴミ箱に捨て、しかもその写真をブログに掲載するという大失態をやらかした。ブログには「大半は市外からの扇動家が送り付けてきたデマだらけのメチャクチャなもの(中略)あとは焼却処理あるのみです」と人を小馬鹿にした文章で埋められていた。

 井戸市議の“陳情書ゴミ箱ポイ捨て問題”は全国紙や通信社、また全国ネットのテレビにまで取り上げられてしまい、市議会事務局や維新の市議団には多数の苦情が寄せられたという。維新の幹事長である松井一郎知事も「ええかげんにせえよ」と大激怒。維新幹部も「えらいことをしてくれた」と頭を抱えている。

 夏には参院選を控え、また市議会では水道統合や交通局の民営化など、橋下市長主導の重要条例の可決も大きな課題になっている。そのような政治的な背景もあり、大阪維新の会市議団にすれば、ここでケジメをつけておかないと、ますます世論の風当たりがキツくなると判断。その結果、本人は3ヶ月の団員資格停止と役職剥奪の処分を喰らい、維新市議団もHPで謝罪した。


 さて、この処分についてネット上では「軽すぎる」「民意の否定」という意見が数多く散見されるが、それは大きな誤解であることを指摘しておきたい。

 市民からの陳情書を議会に諮る前に井戸市議が闇に葬り去ったのなら、それは確かに民意の否定であり、議員資格を失うほどの蛮行だろう。だが今回、陳情書を採択するか否かは大阪市議会の民生保健委員会で諮られ、結果、不採択となったものだ。かりに「民意を否定した」というのなら、それは井戸市議ではなく議会の側である。

 では井戸市議は何をしたのか。不採択になった陳情書の原本は、議会事務局が一定の保存期間を経た後、いずれ廃棄処分になる運命にあった。だから井戸市議が陳情書のコピーをシュレッダーで処分しても何ら問題はない。問題なのは不採択のコピーをゴミ箱に捨てた写真を必然性もなくブログに掲載したことである。それは民意の否定ではなく民意を愚弄した行為である。

 地方議員は市民、住民の窓口となるべき存在である。市民の意見や不満、批判をくみ取り、それを議会で審議するのがおもな役割だ。もし市民の声など一切耳を貸さない議員がいたら、その人物は政治家の資格などない。同様に、井戸市議が悪意を持って民意を否定したのなら公職からとっと離れるべきである。だが、今回は違う。ただし、愚弄などは人としても最低な行為だが、3ヶ月の団員資格の停止処分は想像するほど決して軽くはない。妥当な判断だろう。


 日ごろ、大阪の府政や市政を取材し、各党の議員諸氏とも交流のある私にしても、正直言って井戸市議のような傲岸不遜な人間は大嫌いである。だが、それにしても「市議など辞めてしまえ」「税金ドロボー」という感情的で扇動的な声を見聞きすると、それもなんだか危うい兆候を感じてしまう。

 ちなみに、地方自治法の定めでは当該の地方議会において議員の3分の2以上が出席し、その4分の3以上の賛成がなければ、議員の身分を奪うことは不可能だ。またリコールにしても、まず有権者の3分の1以上の署名を集めなければ、特定の議員の解職請求は求められない。かりに請求ができても、今度は住民投票が待っている。そこで、有効投票総数の過半数の賛成があれば、そこではじめて議員は失職する。議員の地位を奪うのは容易ではないのだ。

(2013年4月4日)


大阪維新の会
 http://oneosaka.jp/
大阪維新の会(Wikipedia)
 http://ja.wikipedia.org/wiki/大阪維新の会
被災地のがれき処理 (Yahoo!ニュース)
 http://dailynews.yahoo.co.jp/fc/domestic/311eq_disaster_waste/

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