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原発再稼働か停止かで揺れる福井県おおい町
〜 町民の複雑な本音を探ってみた


吉富 有治
おおい町役場
 福井県大飯郡おおい町。人口わずか9000人弱の小さな町が全国的な注目を浴び、そして町全体が揺れている。関西電力が所有する大飯原発の再稼働をめぐり、政府は4月13日、「妥当」と判断した。しかし京都府や滋賀県、大阪市などの周辺都市は猛反発。このまま原発推進政策を取るのか、それとも脱原発を進めるか、で国論は割れ、原発立地の町はその渦中に投げ込まれてしまった。


 私は4月中旬、朝日放送の情報番組「キャスト」の取材で現地を訪れる機会があった。数年前からおおい町や隣接する高浜町の町民の皆さんと原発問題を通じて親しく交流していた私は、以前よりマスメディアを通じて地元の微妙な空気を伝えたいと思っていた。じつは町民の本音にしても、賛成だ、反対だと単純には割り切れないものがある。多くの人たちは「物言えば唇寒し」の状態に置かれている(なお、この原発レポートは4月19日に関西エリアで放送している)。

 そのおおい町である。この町は原発があるおかげで、十分すぎるほどの財政的な恩恵を受けている。町の財政規模は、同じ人口の他町に比べて、ほぼ3倍。財務体質は超がつくほど優良で、国からの地方交付税も受けていない。理由は簡単。原発を抱える自治体は国から電源三法交付金という名の“迷惑料”が潤沢に支払われているからだ。この交付金のおかげで原発立地の自治体は必要以上の贅沢が可能になる。

 町を歩いてみれば、それは実感できる。リゾートホテルにマリーナ、温泉などのアミューズメント施設、豪華な総合体育施設など、人口規模から見て不釣り合いとも思えるハコモノが町のあちこちに立ち並んでいる。豊かな財政のおかげで町民への福祉行政も他と比べて充実している。

 しかし、こういった贅沢が可能なのは、大飯原発が稼働しているという条件があればこそ。停止中では国からの迷惑料も減らされる。ましてや再稼働が認められず廃炉にでもなれば、電源三法交付金は入らなくなる。農業と漁業以外にさしたる収入源がない町にすれば、廃炉はすなわち財政破綻。町の「死」を意味する。


 「私たち町民の願いは、原発の再稼働です。そうでなければ町は衰退するでしょう」

 こう語るのは、おおい町のある町会議員だ。

 「おおい町は交付金があるおかげで、町民全員が金銭的な恩恵を受けていると思われているようですが、それは誤解です。漁業補償を受けた一部の町民を除き、誰も生活は変わっていないのです。確かに町の財政は豊かになりました。原発が来る前は財政破綻寸前だったのに、原発マネーのおかげで生き返ったのは事実です。しかし町民のサイフが豊かになったわけではないのに、原発リスクだけは抱えています。それでも電気の生産地としての誇りがある。原発を抱えることなく電気を消費するだけの自治体の皆さんは、私たちの複雑な気持ちを理解してほしいのです」

 この町会議員は、原発行政に関しては中立派、良識派に属する方である。推進派の方にもインタビューを試みたが、こちらは拒否。町民の大半も「マスコミは嘘ばかり言うから嫌いだ」と、取材を受けてくれなかった。

 その中でも、農業を営む30代の男性が重い口を開いてくれた。

 「原発が怖いかといえば、怖いに決まっています。本音を言えば、おおい町に原発があるのは反対です。一部を除いて多くの町民も心のなかでは、そう考えているでしょう」

 「けれど、あからさまな本音は口に出して言えないのです。町民の約2割は、原発関連の仕事に就いたり、あるいは何らかの形で商売上の恩恵を受けています。もし原発反対と言えば、たぶん除け者にされるでしょう。推進派の町議から睨まれ、様々な面でいじわるされる可能性もある。だから何も言えないのです」

 「大飯原発が再稼働しなければ安全だと考えている方が多いようですが、それは間違いです。原発がストップしても、原子炉の放射性物質はそのままです。もし大地震が起こって大飯原発が被害を受ければ、ストップしたままでも放射能汚染の危険性はあるのです。私も再稼働には反対ですが、その場合、ウランなどの使用済み燃料の保管をどうするのか。この点は全国民で考えてもらいたいです」


 おおい町の時岡忍町長も再稼働について一応は慎重な態度をとっている。だが、この町長、長男が経営する会社が関西電力と取引している事実がある。しかも、筆頭株主は町長本人。従業員15人ほどの小さな町工場でありながら、大飯原発内に作業所を抱えて売り上げは順調に伸び、しかもその大半を原発関連が占めている。ここ数年、関電との取引は総計で4億円を超えている。ある町民は「町長の親族が経営する会社だから、関西電力も優遇しているのでは」といぶかしがる。この問題について私は昨年10月、WEBマガジン「現代ビジネス」(講談社)でレポートし、その後、毎日新聞や朝日新聞、また中日新聞や赤旗が続報を流し、「キャスト」でも紹介した。

 その時岡町長は私の取材に対して「私自身は経営にはノータッチ。売り上げが伸びているのは息子の経営努力の結果。関西電力に対しては中立の立場だ」と語っている。かりに町長の言い分が正しいとしても、電力会社の思惑はどうだろうか。この会社を優遇しておけば、町長も俺たちには刃向かわないだろうという考えはないのだろうか。

 なお、再稼働をめぐる問題では柳澤光美経産副大臣と原子力安全・保安院の幹部らが4月26日、おおい町を訪問。住民を対象にした説明会が同町の総合体育館で開かれた。説明会の終了後、参加した旧知の町民に感想を尋ねてみると、「反対意見も出ましたが、あくまでもガス抜きです。一応、説明はしましたよという政府のアリバイ作りでしょう」と自嘲気味に語ってくれた。


 再稼働で大きく揺れる福井県おおい町。町長から町民まで、その胸中は不安と期待、あるいは様々な思惑が絡み、複雑なのである。

(2012年5月2日)


おおい町(Wikipedia)
 http://ja.wikipedia.org/wiki/おおい町
大飯原発の再稼働問題 (Yahoo!ニュース)
 http://dailynews.yahoo.co.jp/fc/local/ohi_nuclear_power_plant/
よくわかる原子力 - 電源三法交付金 地元への懐柔策(原子力教育を考える会)
 http://www.nuketext.org/yasui_koufukin.html

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